「食卓こそは、人がその初めから決して退屈しない唯一の場所である」とはガストロノミー(美食学)で有名なブリア・サヴァランの著書「美礼賛」に残る一節。
そして西洋の人々にとって、肉はいつの時代もその色合い、風味の良さ、栄養の高さ、どれをとっても申し分ない食卓の主役として考えられています。肉料理は長い伝統の中で育まれ発達しました。
肉と言えば、まずその代表は牛肉です。日本人が牛肉を口にするようになったのは明治時代以降のことで、明治天皇がきっかけにその歴史は100年ほどになります。
牛の飼育は古くから行われてはいましたが、それを食用としてではなく、もっぱら農耕用と輸送用でした。
その後改良がくわえられて日本独自の食用肉となりました。これらの中で、とくに味の良さでは、神戸牛や松坂牛、近江牛などの和牛は定評があります。
しかし、現在それらは飼育に経費がかかり過ぎて肉のコストが高くなり、一般的ではなくなりつつあります。日本では食用牛肉というと前述の和牛と考えられがちですが、昨今、生産の半数近くは乳用去勢牛で、この方がコストが安く生産ができるようです。
次第に肉食も増えて国内生産だけでは補えため、オーストラリア、アメリカなどからの輸入肉も増えている状況です。
「大衆牛肉」としては、国産乳用種牛肉と輸入牛肉が一般に定着しつつあります。
輸入肉は、和牛の霜降り肉に代表される日本人の舌に慣れ親しんだ味わいとは違うため、好まれない場合もありますが、日本の牛肉生産事情が著しく好転するとも考えられないので、そのおいしい調理法をマスターする方が賢明です。
ホルスタインと和牛のサーロインの違いは牛の品種と育ち方から違う!
私たちがたべている牛肉のうち、約60%はオーストラリアやアメリカから輸入されています。残り約40%が国内産で、そのうち、黒毛和種などの肉専用種が約45%、乳用種や交雑種(和牛と乳用種の交配)に由来するものが約55%を占めています。
ホルスタインサーロインと和牛のサーロインを比べてみますと、和牛のサーロインの特徴において肉質は非常にやわらかく、肉の赤色が浅く、サシ(肉の繊維の間に脂がはいる)があり、肉厚があります。(ステーキにしたとき盤面が大きくみえます)また、加熱したとき脂の甘味や香りがたち、濃厚な味わいが和牛のサーロインよさでもあります。
ホルスタインサーロインにおいては、和牛のサーロインと比べ肉質は硬めとなり、肉色がこく、赤身肉(サシがほとんどない)肉厚がありません。また、加熱したところ香りがたちますが、味がさっぱりしていることがありますが、和牛と比べ水分量が多いため栄養価は若干高めになります。
これらの特徴においての違いから料理の仕方にも変化が必要です。ただ、圧倒的に違うのはホルスタインサーロインは、和牛と比べ価格帯が約40%以上の安く購入することができます。
このような違いは、品種や牛のライフサイクル(一生)によって違いがあります。では、そのライフサイクルにふれていきたいと思います。
肉専用種(和牛、外国種のアンガスなど)のライフサイクル
肉専用種のめす牛は、生後15~16ヵ月齢の時(体重300~350kg)に初めて交配されます。その9割以上を人工授精で行っています。
放牧されている牛などの中には、種雄牛と一緒にして自然交配による繁殖を行っているものも一部みられます。
アメリカ、オーストラリアなどでは、肉専用種は自然交配によっているのが一般的です。
人工授精では、優秀な種雄牛の精液をストローに詰め(0,5ml)、マイナス196℃の液体窒素の中で保存しておき、受精するときに凍結精液を融解して用いるのが一般的となっています。
交配され妊娠しためす牛は、約285日の妊娠期間を経て、25~26ヵ月齢時に初めて子牛を生みます(牛は単体動物のため一回に一頭だけ出産します)
生まれた子牛は5~7ヵ月間、母牛に育てられますが、後半の2~3ヵ月間は草や配合飼料(輸入できるとうもろこし、こうりゃん、大豆粕(だいずかす)などを原料に配合した飼料)、穀類なども与えられます。
また、おす牛は生後2~3ヵ月齢時に去勢します。これは肉質を良くし、太りやすくし、性質をおとなしくして飼いやすくするために行います。
こうしておおきくなった子牛は、5~7ヵ月齢時に離乳し、メス牛は育成後、一部は肥育に仕向けますが、主に繁殖に用いられ、おす牛(去勢牛)は肥育に仕向けられます。
肥育仕向けとなった去勢牛は、約20ヵ月かけて肥育され、仕上げられます。この間、配合飼料や大麦、草、稲わらなどが与えられますが、大まかにいって10~11kg程度の穀物類のえさを与えることにより、体重が1kg増えることになります。
このほか、肉専用種のめす牛で繁殖の役目が終わったものは、そのまま屠畜されるほか、1~3ヵ月間「飼い直し」と言って、配合飼料や穀類を用いた短期間の肥育をおこない肉質をよくして出荷されるものがあります。
この出荷前の段階でビタミンAの調整がおこなわれ、肉色、肉質に影響されます。(浅い赤色やサシはこの時につくられます)また、ビタミンが欠如する期間でもありますので、栄養価にも影響しています。
乳用種のライフサイクル
日本で飼われている乳用牛の大部分がホルスタイン種ですが、乳用牛の場合、その飼養目的が牛乳を生産することにあるため、牛乳のでないおす牛は優秀な種雄牛になるもの以外は食肉用として肥育されます。
ホルスタイン種のおす子牛は、うまれると約1週間、母乳で育てられます。
これは、分娩直後の牛乳(初乳)にいろいろな免疫物質が含まれているため、子牛を丈夫に育てる上で初乳を飲ませることが必要不可欠です。
その後、母乳は搾乳に用いられますので、子牛は母牛から離され、脱脂粉乳などを原料とする人工乳、乾草、配合飼料などにより人工哺育され、肥育素牛として、7ヵ月齢、体重270kgに育成されます。それらの素牛が一年余りかかって肥育され約270kgに育成されます。
その間、与えられる餌は肉専用種の場合とほぼ同様です。ただ、ホルスタイン種大型品種であり、1日あたりの増大量が多く、増体能力が優れていることから、肥育期間は肉専用種よ短くてすみます。ただ、脂肪交雑が少ないなど、肉質では肉専用種に劣ります。
牛は草食動物なので、人間が消化吸収できない草などの繊維質を牛乳や肉に作り替えることができるという特性をもっています。したがって、放牧状態でも牧草が豊富であれば自然に太るのですが、肥育の後半はもっぱら配合飼料中心にかなりの量の穀物を与えて肥育しています。
まとめ
ホルスタインサーロインと和牛サーロインの違いは、品種(体格などの違い)やライフサイクルの違い(飼養目的、飼料)で肉質や色合いが変わってきます。例えば、和牛は肉質や色合いをよくするためにビタミンの調整をおこない(ビタミン量を減らす)。逆にホルスタインはビタミンを投与したりすることによって肉色が濃くなります。
また、ホルスタインは乳用専用だからといって食べれないことはなく、海外では、肉専用と乳用専用と両方をホルスタインをつかって飼育されています。
ホルスタインサーロインと和牛サーロインの違いはあるものの、大切なのは自分にあったもの選び、調理の仕方や工夫することが賢明ではないかと思います。
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