「牛もも肉を焼いたら硬くなった」
「ローストビーフには、どの部位がよいのか」
「うちももと、そとももは何が違うのか」
このように悩んだことはないでしょうか。
牛もも肉は、すべて同じ肉質ではありません。
うちもも、しんたま、らんいち、そとももでは、やわらかさや筋の入り方が異なります。
そのため、同じ焼き方では仕上がりが安定しません。
結論から言えば、牛もも肉をやわらかく仕上げるポイントは次の5つです。
- 料理に合う部位を選ぶ
- 肉の繊維を断って切る
- 厚さをそろえる
- 加熱温度と時間を管理する
- 加熱後は繊維を断って薄く切る
牛もも肉は、赤身を活かした商品を作りやすい部位です。
ローストビーフ、焼肉、薄切り、煮込み、惣菜原料などに使えます。
この記事では、牛もも肉の種類、硬い理由、柔らかくする方法を解説します。
飲食店、精肉店、惣菜製造業者、食品メーカーの仕入れ判断にも使える内容です。
牛もも肉とは
牛もも肉は、牛の腰から後ろ脚周辺にある赤身中心の部位です。
牛が立ったり歩いたりする際によく使う筋肉が集まっています。
そのため、ロースやヒレより筋繊維がしっかりしています。
ただし、「牛もも肉はすべて硬い」という意味ではありません。
同じもも系部位でも、次の条件で肉質が変わります。
- 部位
- 品種
- 月齢
- 経産・未経産
- 脂肪の入り方
- 筋の位置
- 熟成状態
- カット方向
この記事では、業務用で比較されやすい次の4部位を扱います。
- うちもも
- しんたま
- らんいち
- そともも
農林水産省の部位紹介でも、うちももは脂肪が少ない赤身、そとももは煮込みにも使われる部位、ランプはステーキやローストビーフに向く部位として整理されています。

牛もも肉の特徴
赤身が多い
牛もも肉は、ロースやバラより脂肪が少ない傾向があります。
脂の甘みより、赤身の味を活かす部位です。
次のような商品を作りやすくなります。
- 国産牛赤身ステーキ
- ローストビーフ
- 牛たたき
- 赤身焼肉
- 牛肉サラダ
- 弁当用牛肉惣菜
筋繊維がしっかりしている
もも周辺は、牛がよく動かす部分です。
そのため、筋繊維が太い部位や筋の多い部分があります。
繊維に沿って切ると、噛み切りにくくなります。
加熱後は、繊維を断つ方向に切ることが重要です。

加熱しすぎると硬さが目立つ
脂肪の少ない赤身肉は、加熱しすぎるとパサつきが目立ちます。
加熱によって筋繊維が縮み、水分も失われるためです。
厚みのある肉は、表面だけを強く焼いても中心まで均一に加熱できません。
時間だけで判断せず、肉の厚さと中心温度を確認します。
部位による差が大きい
もも肉という表示だけでは、料理との相性を判断できません。
ステーキ向きの部位もあります。
薄切りや煮込みに向く部位もあります。
業務用では、必ず部位名まで確認してください。

ランプ(右)
牛もも肉の部位別特徴
うちもも
うちももは、ももの内側にある大きな赤身部位です。
脂肪が少なく、まとまった形で取れます。
主な用途は次のとおりです。
- ローストビーフ
- 牛たたき
- 薄切り
- 焼きしゃぶ
- スライス惣菜
- 味付け肉
大きなブロックを取りやすいため、ローストビーフ原料として使われます。
一方、端に近い部分では肉質や厚さが変わります。
同じブロックをすべて同じ商品にせず、分けて使用します。
中心部はローストビーフに使います。
薄い部分は、スライスや細切りへ回せます。


しんたま
しんたまは、うちももの下側にある丸い形の部位です。
関西では「マル」と呼ばれることがあります。
細かく分けると、次の部位が含まれます。
- しんしん
- かめのこ
- まるかわ
- かぶり
それぞれ、やわらかさや筋の入り方が異なります。
しんしんは、比較的きめが細かい赤身部位です。
焼肉、ステーキ、ローストビーフなどに使えます。
かめのこは赤身が強く、薄切りや焼肉に向きます。
しんたまを一括して扱うより、分割して用途を決める方が価値を高められます。

らんいち
らんいちは、ランプとイチボに分けられます。
もも系部位の中では、比較的やわらかい部分です。

ランプ
ランプは、赤身の味があり、きめも比較的細かい部位です。
次の用途に向いています。
- 赤身ステーキ
- ローストビーフ
- 焼肉
- 牛たたき
- カツレツ
厚切りでも商品化しやすい部位です。
ただし、筋の位置とカット方向を確認します。

イチボ
イチボは、牛の尻に近い部分です。
ランプより脂が入りやすい個体もあります。
次の用途に向いています。
- ステーキ
- 焼肉
- ロースト
- 厚切り商品
脂と赤身のバランスを訴求しやすい部位です。
ただし、脂肪量や肉質には個体差があります。
そともも
そとももは、ももの外側にある部位です。
筋繊維がしっかりし、きめが粗い部分があります。
厚切りステーキへ一律に使用すると、硬さが目立つ場合があります。
次の用途に向いています。
- 薄切り
- しゃぶしゃぶ
- 切り落とし
- しぐれ煮
- 牛丼
- 煮込み
- 味付け加工
薄く切ることで、食べやすくなります。
タレやだしを使う料理にも向いています。
そとももからは、千本すじと呼ばれる部位も取れます。
千本すじは筋が多く、そのままでは硬い部位です。
長時間煮込むことで、ゼラチン質を活かせます。

牛もも肉の部位別比較表
| 部位 | 肉質の傾向 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| うちもも | 脂肪が少ない大きな赤身 | ローストビーフ、薄切り | 部分ごとに厚さと肉質が違う |
| しんたま | 分割部位ごとの差が大きい | 焼肉、ステーキ、薄切り | 筋の位置を確認する |
| ランプ | 比較的やわらかい赤身 | ステーキ、ローストビーフ | 繊維方向に注意する |
| イチボ | 脂と赤身のバランス | ステーキ、焼肉 | 個体により脂肪量が違う |
| そともも | 筋繊維がしっかりしている | 薄切り、煮込み、牛丼 | 厚切りでは硬さが出やすい |
牛もも肉のメリット
赤身商品を作りやすい
脂の多い牛肉が苦手な顧客へ提案できます。
「国産牛赤身」「赤身ローストビーフ」などの商品名にもつなげられます。
脂の量ではなく、肉の味を価値にする部位です。

複数のメニューへ展開できる
牛もも肉は、部位とカットを変えることで複数の商品に使えます。
例えば、うちもも1本から次の商品を作れます。
- 中心部はローストビーフ
- 厚みのある部分はステーキ
- 薄い部分はスライス
- 端材は細切りやミンチ
一つの用途だけで考えないことが重要です。
高単価商品と定番商品を作れる
ランプやイチボは、赤身ステーキとして販売できます。
うちももは、ローストビーフへ展開できます。
そとももは、牛丼や煮込みの定番商品へ使えます。
同じもも系部位でも、販売価格帯を分けられます。

原価管理へつなげやすい
整形済みやグリムキ済みの商品は、使用可能重量を把握しやすくなります。
仕込み時間や廃棄ロスも減らせる場合があります。
kg単価だけではなく、使える部分の原価で判断してください。
牛もも肉を柔らかくする5つの方法
1.料理に合う部位を選ぶ
最も重要なのは、下処理ではなく部位選びです。
硬い部位を厚切りステーキにしてから、調味料だけでやわらかくするのは困難です。
用途から部位を選びます。
| 作りたい料理 | 選びやすい部位 |
| ローストビーフ | うちもも、ランプ |
| 赤身ステーキ | ランプ、イチボ、しんしん |
| 焼肉 | ランプ、イチボ、しんしん |
| しゃぶしゃぶ | うちもも、そともも |
| 牛丼・しぐれ煮 | そともも、うちもも |
| 長時間煮込み | そともも、千本すじ |

2.繊維を断って切る
牛肉には、筋繊維が一定方向に走っています。
繊維に沿って切ると、長い繊維が口に残ります。
繊維へ直角に包丁を入れると、噛み切りやすくなります。
ローストビーフも、繊維を断って薄く切ります。
肉の向きが分かりにくい場合は、切る前に表面を確認してください。

3.厚さをそろえる
厚さがばらばらだと、火の入り方も変わります。
薄い部分だけが加熱しすぎます。
ブロック肉は、できるだけ厚さをそろえて成型します。
ステーキや焼肉も、同じ厚さへカットします。
調理時間を標準化しやすくなります。
4.温度と時間を管理する
「強火で短時間」だけでは、すべてのもも肉をやわらかくできません。
薄切りは、短時間加熱が向いています。
厚切りやブロック肉は、中心までの温度管理が必要です。
見た目や指で押した感触だけでは、安全な加熱を判断できません。
中心温度計を使用してください。
食品安全委員会は、低温調理を行う場合、中心温度と維持時間を管理し、見た目や余熱だけで判断しないよう注意を促しています。牛ももブロックでは、中心温度が63℃に達してから30分、70℃なら3分、75℃なら1分など、同等の加熱条件を守る必要があります。
飲食店や製造事業者は、自社のHACCP計画と調理マニュアルに従ってください。

5.加熱後に休ませてから切る
加熱直後のブロック肉は、内部の肉汁が動いています。
すぐに切ると、肉汁が流れ出やすくなります。
調理計画に沿って休ませてから切ります。
ただし、休ませる時間だけで加熱を完了させてはいけません。
安全性は、加熱中の中心温度と時間で管理します。
漬け込みで柔らかくできるのか
漬け込みは、表面の食感や味付けを変える方法です。
次の材料が使われます。
- 塩こうじ
- 玉ねぎ
- 果物由来の酵素
- ヨーグルト
- ワイン
- 調味液
ただし、漬け込みだけで部位の硬さが消えるわけではありません。
長時間漬けると、表面が崩れる場合もあります。
商品規格と製造条件をそろえて試作してください。
業務用では、次の項目を記録します。
- 漬け込み時間
- 原料重量
- 調味液重量
- 加熱前重量
- 加熱後重量
- 味の変化
- 食感
- 保存条件
牛もも肉に向く料理
ローストビーフ
うちももとランプは、ローストビーフに使いやすい部位です。
赤身の形と色を活かせます。
飲食店では、次の商品へ展開できます。
- コース料理
- ランチ
- サラダ
- 肉寿司
- ローストビーフ丼
惣菜では、次の商品へ展開できます。
- 弁当
- オードブル
- サラダ
- 真空パック商品
- 冷凍惣菜
商品化する場合は、加熱後歩留りを測定します。

ステーキ・焼肉
ランプ、イチボ、しんしんが候補です。
ただし、品種と個体によって肉質は変わります。
ホルスタイン経産牛の場合は、筋の位置や厚さを確認します。
和牛と同じ厚切りや焼き方が適するとは限りません。
赤身ステーキとして設計してください。

薄切り・しゃぶしゃぶ
うちももや、そとももを薄く切ります。
繊維を短くするため、食べやすくなります。
次の商品に展開できます。
- しゃぶしゃぶ
- すき焼き
- 焼きしゃぶ
- 牛丼
- 肉うどん
- 弁当用惣菜
煮込み・しぐれ煮
そとももや筋の多い部分は、煮込みに向きます。
長時間加熱によって、食感を調整します。
次の商品に活用できます。
- ビーフシチュー
- カレー
- しぐれ煮
- 牛肉の赤ワイン煮
- 牛すじ煮込み
ミンチ・加工原料
整形時に出た小肉は、加工原料へ回せます。
- ハンバーグ
- メンチカツ
- コロッケ
- ミートソース
- レトルトカレー
端材まで商品化すると、全体の回収率を高められます。
牛もも肉でよくある失敗
そとももを厚切りステーキにする
そとももは筋繊維がしっかりしています。
厚切りでは、硬さが目立つ場合があります。
薄切りや煮込みへ用途を変更します。
加熱時間だけで判断する
同じ500gでも、厚さが違えば中心温度の上がり方は変わります。
重量だけでなく、厚さも確認します。
中心温度計で実測してください。
繊維に沿って切る
繊維が長く残り、噛み切りにくくなります。
加熱前と加熱後の両方で繊維方向を確認します。
仕入単価だけで比較する
未整形品は安く見えることがあります。
しかし、脂肪や筋を除去すると重量が減ります。
次の式で使用可能部分原価を求めます。
加熱後歩留りを測っていない
ローストビーフや煮込みでは、加熱後に重量が減ります。
次の式で確認します。
原料歩留りと加熱歩留りを分けて管理してください。
余熱だけでローストビーフを作る
表面を焼いた後、アルミホイルに包むだけでは、中心部が必要な温度に達しない場合があります。
食品安全委員会も、見た目や余熱に頼る調理を避けるよう案内しています。
牛もも肉と他部位の違い
| 部位 | 脂肪 | やわらかさの傾向 | 主な用途 | 原価の考え方 |
| もも | 少ない | 部位ごとの差が大きい | ロースト、赤身、薄切り | 歩留りと用途分けが重要 |
| サーロイン | 多い商品がある | 比較的やわらかい | ステーキ、すき焼き | 高単価販売が必要 |
| リブロース | 脂が入りやすい | やわらかい | ステーキ、焼肉 | 脂肪量を確認する |
| ヒレ | 少ない | 非常にやわらかい | 高級ステーキ | 仕入単価が高くなりやすい |
| かた | 筋がある | 硬めの部分もある | 煮込み、スライス | 部位分割が必要 |
| バラ | 脂が多い | 部分差がある | 焼肉、煮込み | 脂肪歩留りを確認する |
牛もも肉は、サーロインの代用品ではありません。
赤身、用途の広さ、商品展開力を活かす部位です。
牛もも肉が業務用で選ばれる理由
ローストビーフ原料として使いやすい
うちももは、大きなブロックを取りやすい部位です。
商品サイズをそろえやすく、スライス後の見た目も作れます。
複数の商品へ振り分けられる
一つのブロックを、肉質や形で分けます。
- ローストビーフ
- スライス
- 焼肉
- 細切り
- ミンチ
一つの商品へ無理に統一しないことが、歩留り改善につながります。
赤身メニューを提案できる
脂の多い商品とは違う顧客層を狙えます。
- 赤身を好む顧客
- ランチ客
- 女性向けメニュー
- 高たんぱくを意識する顧客
- 国産牛メニューを求める顧客
健康効果を断定せず、赤身の食べやすさや用途を伝えます。
整形済みなら作業を減らせる
グリムキ済みとは、脂肪や筋を取り除いた状態です。
次の改善が期待できます。
- 筋引き時間の削減
- 廃棄ロスの削減
- 使用量の安定
- 原価計算の簡略化
- 作業者による品質差の縮小
商品単価だけではなく、作業費を含めて比較します。
牛もも肉の原価計算例
次の条件で考えます。
- 税抜仕入単価:2,000円/kg
- 整形歩留率:85%
- 加熱歩留率:80%
まず、整形後の原価です。
税抜2,000円÷85%=税抜約2,353円/kg
次に、加熱後の製品原価です。
税抜2,353円÷80%=税抜約2,941円/kg
ローストビーフを1食80g使う場合です。
税抜2,941円×0.08kg=税抜約235円
牛肉原料だけで、1食税抜約235円です。
この計算には、次の費用を含んでいません。
- 運賃
- 調味料
- 人件費
- 包材
- 水道光熱費
- 販売手数料
実際の製造原価では、これらも加えます。
業務用の牛もも肉を選ぶ6つのポイント
- 部位名
- 品種と原産地
- 整形状態
- 冷蔵または冷凍
- 1本当たりの重量
- 想定する料理用途
「牛もも肉」という商品名だけで判断しないでください。
ローストビーフなら、ブロックの形も重要です。
スライスなら、肉の幅と筋の状態を確認します。
煮込みなら、価格と加熱後歩留りを確認します。
牛もも肉に関するよくある質問
- 牛もも肉で比較的やわらかい部位はどこですか
-
一般的には、ランプやイチボ、しんしんが候補です。
ただし、品種や個体によって差があります。
- 牛もも肉はステーキにできますか
-
できます。
ランプ、イチボ、しんしんなどが候補です。
そとももを厚切りにする場合は、硬さに注意してください。
- ローストビーフにはどの部位が向いていますか
-
うちももとランプが代表的です。
形、筋、脂肪量、商品サイズで選びます。
- 牛もも肉が硬くなる理由は何ですか
-
筋繊維がしっかりしていることが理由の一つです。
加熱しすぎや、繊維に沿った切り方でも硬くなります。
- 牛もも肉は低温調理できますか
-
できますが、自己流の温度設定は避けてください。
中心温度計を使い、検証された温度と時間を守ります。
見た目だけで安全性を判断することはできません。
まとめ|牛もも肉は部位と用途を合わせて選ぶ
牛もも肉は、赤身中心の使い勝手がよい部位です。
ただし、すべて同じ肉質ではありません。
- うちももは、ローストビーフや薄切り
- ランプは、ステーキやローストビーフ
- イチボは、ステーキや焼肉
- しんたまは、分割部位に合わせて使用
- そとももは、薄切りや煮込み
牛もも肉をやわらかくする基本は、調味料ではありません。
部位、切り方、厚さ、加熱を合わせることです。
業務用では、仕入単価だけで判断しません。
整形歩留り、加熱歩留り、仕込み時間まで計算します。
部位を売るのではありません。
牛もも肉から、ローストビーフや赤身メニューを作ります。
さらに、歩留りと作業性を改善します。
最終的には、店舗や製造現場の利益改善へつなげます。
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業務用の牛もも肉をお探しの方へ
五十嵐商会では、国産牛ホルスタイン経産牛を中心に、業務用の牛もも肉を取り扱っています。
ローストビーフ用、スライス用、惣菜用など、用途から商品をご確認ください。
商品を比較する際は、kg単価だけではなく、次の条件をご確認ください。
- 部位
- 整形状態
- 1本重量
- ロット
- 想定歩留り
- 冷蔵・冷凍
- 運賃
Mマートで業務用牛もも肉を確認する
用途に合う牛もも肉をご相談ください
「ローストビーフに合う部位を探している」
「整形時間と廃棄ロスを減らしたい」
「1食当たりの原価を計算したい」
「赤身を使った惣菜を作りたい」
このような場合は、用途、必要数量、販売価格をお知らせください。
部位、整形状態、歩留りを踏まえ、用途に合う牛肉をご案内します。


コメント
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