牛肉の原価計算方法|歩留り・経費・1食原価を業務用向けに解説

「安く仕入れたのに利益が残らない」

「牛肉の適正な販売価格が分からない」

「整形後の原価を計算できていない」

このように悩むことはないでしょうか。

牛肉の原価は、仕入単価だけでは判断できません。

脂肪や筋を取り除けば、使用できる重量が減ります。

さらに、運賃、加工時間、包材なども発生します。

結論から言えば、牛肉は次の数字で判断します。

  • 仕入重量
  • 仕入単価
  • 使用可能重量
  • 歩留率
  • 加工・物流経費
  • 1人前の使用量
  • 販売価格

この記事では、牛肉原価計算の基本を解説します。

飲食店、精肉店、スーパー、惣菜製造業者、食品メーカー向けの内容です。

目次

牛肉の原価は仕入単価だけでは判断できない

牛肉は、仕入れた状態のまま販売できるとは限りません。

商品化するまでに、次の作業が発生します。

  • 脂肪を取り除く
  • 筋を除去する
  • 血合いを整形する
  • 部位を分割する
  • スライスする
  • ポーションへカットする
  • 真空包装する
  • 加熱や味付けをする

この工程で、重量と経費が変わります。

例えば、税抜2,000円/kgの牛肉を仕入れたとします。

整形後に80%しか使用できなければ、使用可能部分の原価は税抜2,500円/kgです。

安く見える牛肉でも、歩留りが低ければ原価は上がります。

反対に、整形済み商品は単価が高く見える場合があります。

しかし、歩留りや作業時間を含めると有利なことがあります。

原価計算の目的は、数字を作ることではありません。

利益の残る仕入れと商品設計を行うことです。

牛肉の原価計算で最初に押さえる5つの数字

1.仕入重量と仕入単価

最初に、原料の購入条件を確認します。

仕入金額=仕入重量×仕入単価

例えば、10kgを税抜2,000円/kgで仕入れます。

10kg×税抜2,000円=税抜20,000円

ここで終わると、使用可能部分の原価は分かりません。

2.使用可能重量

使用可能重量とは、実際の商品に使える重量です。

次の部分を除いた後に測定します。

  • 余分な脂肪
  • 血合い
  • 変色部分
  • 規格外部分
  • 廃棄部分

除去した部分でも、別商品に使える場合があります。

その場合は、すべてを廃棄として扱いません。

3.歩留率

歩留率は、仕入重量から何%を商品に使えたかを示します。

歩留率=使用可能重量÷仕入重量×100

10kg仕入れ、8kg使用できた場合です。

8kg÷10kg×100=80%

4.加工・物流経費

牛肉を仕入れて商品にするまでには、経費がかかります。

  • 運賃
  • 加工人件費
  • 包材
  • 消耗品
  • 冷蔵・冷凍保管費
  • 廃棄処理費
  • 販売手数料

管理目的に合わせて、含める項目を統一します。

5.販売価格と使用量

飲食店や惣菜では、1食当たりの使用量を決めます。

精肉店では、100gまたは1パック単位で考えます。

販売単位まで原価を落とし込むことで、利益を判断できます。

牛肉が商品になるまでに重量が変わる

牛肉は、加工工程ごとに商品形態が変わります。

生体から枝肉

生体から、皮、頭部、内臓などを除いた状態が枝肉です。

枝肉は、食肉市場や食肉センターなどで取引されます。

取引される枝肉
取引される枝肉

枝肉から部分肉

枝肉を脱骨し、部位ごとに分割したものが部分肉です。

この工程では、次のものが発生します。

  • 脂肪
  • 小肉
  • 廃棄部分

枝肉から部分肉への詳しい原価計算は、別記事で解説しています。

部分肉から精肉・加工品

部分肉を整形・分割し、販売商品へ加工します。

例えば、次の商品です。

  • ステーキ
  • 焼肉
  • スライス
  • 切り落とし
  • ローストビーフ
  • 味付け肉
  • ミンチ
  • 惣菜原料

加工段階が増えるほど、作業費や包材費も増えます。

牛肉の歩留りを計算する方法

歩留りとは、原料に対する使用可能部分の割合です。

計算式は次のとおりです。

歩留率=使用可能重量÷仕入重量×100

計算例

  • 仕入重量:10kg
  • 使用可能重量:8kg

8kg÷10kg×100=80%

この場合、除去された重量は2kgです。

ただし、2kgすべてが損失とは限りません。

筋を煮込みに使うこともできます。

脂肪や端材を別商品に使う場合もあります。

原料を複数の商品へ分けると、全体の回収率を高められます。

歩留等級と実績歩留率は異なる

枝肉格付のA・B・Cは、歩留等級です。

自社で実測した加工歩留率と同じではありません。

実務では、実際の仕入重量と出来高を記録します。

格付は仕入れ判断の一つです。

実績歩留りは、自社の製造管理に使用します。

仕入単価から使用可能部分の原価を求める

使用可能部分の原材料原価は、次の式で求めます。

使用可能部分原価=仕入単価÷歩留率

歩留率は、小数に直して計算します。

計算例

  • 仕入単価:税抜2,000円/kg
  • 歩留率:80%

税抜2,000円÷0.8=税抜2,500円/kg

仕入単価は税抜2,000円です。

しかし、使用可能部分の原価は税抜2,500円です。

この差を把握することが、原価管理の第一歩です。

送料・人件費を含む実質原価の計算方法

実際の仕入れ判断では、歩留り以外の費用も含めます。

基本式は次のとおりです。

実質原価=仕入金額+付随経費-回収価値

実質原価単価=実質原価÷使用可能重量

回収価値とは、筋や端材などを別商品として使う価値です。

計算例

次の条件で計算します。

項目条件
仕入重量10kg
仕入単価税抜2,000円/kg
仕入金額税抜20,000円
使用可能重量8kg
歩留率80%
運賃税抜1,500円
加工人件費税抜750円
包材費税抜300円
廃棄処理費税抜200円

加工人件費は、時給税抜1,500円で30分作業した仮定です。

実質原価は次のとおりです。

税抜20,000円+税抜1,500円+税抜750円+税抜300円+税抜200円

=税抜22,750円

使用可能部分1kg当たりでは、次の金額です。

税抜22,750円÷8kg=税抜約2,844円/kg

仕入単価は税抜2,000円でした。

しかし、経費を含む実質原価は税抜約2,844円です。

上記は説明用の仮定です。

実際の歩留りと経費は商品や作業条件で変わります。

水道光熱費、調味料、販売手数料、一般管理費、消費税は含みません。

1人前の牛肉原価と原価率を求める

実質原価が分かったら、販売単位へ換算します。

1人前の肉原価

1人前の肉原価=実質原価単価×使用重量

実質原価が税抜2,844円/kgとします。

1人前に120g使用する場合です。

税抜2,844円×0.12kg=税抜約341円

1人前の牛肉原価は、税抜約341円です。

食材原価率

税抜販売価格が1,200円の場合です。

食材原価率=食材原価÷販売価格×100

税抜341円÷税抜1,200円×100=約28.4%

これは牛肉だけの原価率です。

実際には、次の費用も加わります。

  • タレ・調味料
  • 付け合わせ
  • 包材
  • 人件費
  • 決済手数料
  • 水道光熱費

肉原価率と完成商品の原価率を分けて管理します。

牛肉原価を構成する7つの費用

1.原材料費

牛肉本体の仕入金額です。

kg単価と重量から計算します。

2.運賃・仕入付随費

運賃は、ロットによって1kg当たりの負担が変わります。

1kg当たり運賃=運賃÷納品重量

小ロットでは、運賃負担が高くなる場合があります。

3.加工人件費

筋引き、脂肪除去、スライスなどの作業費です。

加工人件費=作業時間×時間当たり人件費

担当者ごとの差も確認します。

4.包材・消耗品

真空袋、トレー、ラベル、手袋などです。

少額でも、年間では大きな金額になります。

5.廃棄処理費

販売できない脂肪や廃棄物には処理費がかかります。

重量だけでなく、処理費も記録します。

6.在庫・値引きロス

売れ残り、値引き、冷凍移行、廃棄も原価へ影響します。

帳簿上の粗利だけでは判断できません。

7.副産物の回収価値

筋、小肉、端材を販売できれば、全体原価を下げられます。

ただし、実際に使用・販売できる金額で評価します。

歩留りが高ければ利益が出るとは限らない

歩留りは重要です。

しかし、歩留りだけで商品価値は決まりません。

例えば、脂肪を多く残せば重量は増えます。

その結果、歩留率は高くなります。

しかし、顧客が脂肪を除去すれば、価値は上がりません。

次の要素を合わせて評価します。

  • 肉質
  • 規格
  • 脂肪の残し方
  • 商品の見た目
  • 加工時間
  • 販売単価
  • 副産物の活用
  • 顧客の用途

目標は、歩留率を高く見せることではありません。

販売可能な商品価値を最大化することです。

業態別に確認すべき原価

飲食店

飲食店では、1人前原価まで計算します。

  • 牛肉使用量
  • 付け合わせ
  • 調味料
  • 加熱後歩留り
  • 販売価格
  • 食材原価率

メニューごとに基準量を決めます。

精肉店・スーパー

精肉店では、部分肉全体の販売計画を作ります。

  • ステーキ
  • 焼肉
  • スライス
  • 切り落とし
  • ミンチ
  • 味付け商品
  • 廃棄部分

高単価商品だけでなく、端材まで販売方法を決めます。

惣菜製造業者

惣菜では、加熱後の重量を測定します。

加熱歩留率=加熱後重量÷加熱前重量×100

ローストビーフや煮込みでは、加熱後歩留りが製品原価へ影響します。

食品メーカー・加工業者

食品メーカーでは、完成品までの工程を分けます。

  • 原料受入れ
  • 解凍
  • 整形
  • 加工
  • 加熱
  • 冷却
  • 包装
  • 検品

工程ごとの重量と時間を記録します。

牛肉の原価管理でよくある5つの失敗

仕入単価だけで比較する

歩留りと運賃を含めなければ、正しく比較できません。

歩留りを測定していない

感覚ではなく、仕入重量と出来高を記録します。

作業時間を原価に含めていない

安い未整形品でも、加工時間が長ければ経費は増えます。

端材をすべて廃棄としている

別商品へ活用できないか検討します。

原価計算後に販売実績を確認しない

予定原価と実績原価を比較します。

売れ残りや値引きも含めて振り返ります。

牛肉原価計算に関するよくある質問

仕入単価と原価は同じですか

同じではありません。

仕入単価は、牛肉を購入した価格です。

原価には、歩留りや加工経費なども含まれます。

仕入単価と原価は同じですか

仕入単価は、牛肉を購入した価格です。

原価には、歩留りや加工経費なども含まれます。

歩留りはどの程度を目標にすべきですか

商品、部位、整形規格によって異なります。

過去実績を蓄積し、自社の標準歩留りを設定します。

脂肪や筋はすべて廃棄ですか

用途と規格によります。

煮込み、ミンチ、牛脂などに活用できる場合があります。また、ホルスタイン経産の脂でスパゲッティのソースを作られるお店があります。

人件費を原価へ含めるべきですか

実際の利益を判断する場合は含めます。

原料比較だけを行う場合は、別管理でも構いません。

計算の目的を明確にします。

税込と税抜のどちらで計算しますか

税込・税抜を混在させないことが重要です。

業務用の原価管理では、税抜で統一する方法が一般的です。

社内の会計処理に合わせて統一してください。

枝肉から部位別原価を計算する方法はありますか

あります。

枝肉金額、副産物、加工経費、部位別予定売価を使用します。

詳しくは、部分肉原価の記事をご確認ください。

まとめ|仕入単価ではなく使える部分の原価で判断する

牛肉原価は、仕入単価だけでは決まりません。

最低限、次の数字を確認します。

  1. 仕入重量
  2. 仕入単価
  3. 使用可能重量
  4. 歩留率
  5. 運賃
  6. 加工人件費
  7. 包材・廃棄費
  8. 1人前の使用量
  9. 販売価格

重要な計算式は次の3つです。

歩留率=使用可能重量÷仕入重量×100

実質原価単価=実質原価÷使用可能重量

1人前原価=実質原価単価×使用重量

原価計算の目的は、安く売ることではありません。

適正な利益を残し、継続できる商品を作ることです。

部位を仕入れる前に、メニューを決めます。

メニューを決める前に、顧客の需要を確認します。

最終的には、顧客の経営改善につながる商品を設計します。

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この記事を書いた人

食肉販売技術管理士。 食肉のプロを養成する学校で「技能賞」を受賞後卒業。関東、関西中心に全国各地で食肉の技術と知識を学ぶ。 国産牛卸の(株)五十嵐商会にて、品質管理室室長を務め、牛の捌きを10年で5万頭の経験。現在は五十嵐商会(株)代表取締役。

近年では、NHK「あさイチ」に出演。「関西じゃらん」の特別付録にて牛肉の寄稿・監修も。

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