国産牛と和牛の違いとは?交雑牛・ホルスタイン・輸入牛を業務用で比較

ホルスタイン

「国産牛と和牛は同じ意味なのか」

「交雑牛やホルスタインは何が違うのか」

「自社にはどの牛肉が適しているのか」

このように悩む方も多いのではないでしょうか。

牛肉は、価格や知名度だけで選ぶと失敗します。

高価な牛肉でも、販売価格に反映できなければ利益は残りません。

安い牛肉でも、歩留りや作業性が悪ければ原価は上がります。

結論から言えば、国産牛と和牛は同じ意味ではありません。

国産牛は、主に産地を示す区分です。

和牛は、牛の品種を示す区分です。

業務用で重要なのは、どちらが上かではありません。

メニュー、販売価格、加工方法に合うかどうかです。

この記事では、次の違いを解説します。

  • 国産牛と和牛の違い
  • 和牛・交雑牛・ホルスタイン・輸入牛の違い
  • 肉質、用途、原価の比較
  • 業態別の選び方
  • 業務用仕入れで確認する項目
目次

まず結論|牛肉は品種ではなく用途から選ぶ

和牛と交雑とホルスタイン肉の違い
左から「ブランド牛」「和牛経産」「交雑種」「ホルスタイン経産」

和牛、交雑牛、ホルスタイン、輸入牛には、それぞれ強みがあります。

業務用では、次のように使い分けます。

種類主な強み向いている用途
和牛高い付加価値を伝えやすい高単価の焼肉、ステーキ、すき焼き
交雑牛肉質と価格のバランスを取りやすい焼肉、スライス、ステーキ
ホルスタイン経産牛国産牛の赤身原料として使いやすいローストビーフ、煮込み、惣菜原料
輸入牛価格と供給量を重視しやすい牛丼、外食、加工品、大量調理

和牛には、和牛に向いた売り方があります。

ホルスタインには、ホルスタインに向いた用途があります。

輸入牛にも、価格や供給面での強みがあります。

仕入れで確認するのは、牛肉の名前だけではありません。

次の条件を合わせて判断します。

  • メニューの販売価格
  • 目標原価率
  • 部位
  • 整形状態
  • 想定歩留り
  • 仕込み時間
  • 必要数量
  • 供給の安定性
  • 顧客が求める価値

部位を売るだけでは、利益は安定しません。

どのメニューで、どれだけ利益を残すかが重要です。

国産牛と和牛は何が違うのか

国産牛と和牛は、同じ意味ではありません。

違いを簡単に整理すると、次のようになります。

表示主に示しているもの
国産牛牛肉の原産地に関する区分
和牛牛の品種に関する区分
ブランド牛産地や団体ごとの基準を満たした牛肉
交雑牛異なる品種を掛け合わせた牛
輸入牛海外を原産地とする牛肉

国産牛とは

国産牛は、和牛だけを指す言葉ではありません。

国産牛として流通する牛肉には、次の種類があります。

  • 和牛
  • 交雑牛
  • ホルスタインなどの乳用種
  • その他、表示基準上で国産となる牛肉

そのため、商品に「国産牛」と書かれていても、必ず和牛とは限りません。

業務用仕入れでは、「国産牛」という表示だけで判断しないことが重要です。

次の情報も確認します。

  • 品種
  • 性別
  • 経産・未経産
  • 部位
  • 格付
  • 整形規格
  • 冷蔵・冷凍
  • 原料用途

和牛とは

和牛は、牛の品種を示す区分です。

代表的な品種は次の4種類です。

  • 黒毛和種
  • 褐毛和種
  • 日本短角種
  • 無角和種

一般的に流通量が多いのは黒毛和種です。

ただし、「和牛だからすべて同じ肉質」というわけではありません。

品種、産地、月齢、性別、肥育方法でも違いが出ます。

部位や個体によっても、サシや食感は変わります。

業務用では、和牛という名前だけでなく、実際の商品規格を確認します。

牛肉の枝肉
左が日本短角種
右が黒毛和種
両方とも和牛として扱われる

ブランド牛とは

ブランド牛は、和牛と同じ意味ではありません。

産地や生産団体が定めた基準を満たした牛肉です。

基準には、次のような項目があります。

  • 品種
  • 生産地域
  • 肥育期間
  • 出荷月齢
  • 枝肉格付
  • 生産者
  • 血統

ブランド牛は、産地や品質の物語を伝えやすい商品です。

贈答、高級焼肉、コース料理などに向いています。

一方で、ブランド名を価格へ反映できなければ利益は残りません。

ブランド牛の格付け印
ブランド牛の格付け印

和牛・交雑牛・ホルスタイン・輸入牛の違い

ここからは、業務用で扱う主な牛肉を比較します。

和牛

和牛は、高い付加価値を伝えやすい牛肉です。

特に黒毛和種では、サシを評価する商品が多くあります。

向いている用途は次のとおりです。

  • 高単価の焼肉
  • ステーキ
  • すき焼き
  • しゃぶしゃぶ
  • 贈答商品
  • コース料理

和牛の強みは、牛肉そのものを主役にできることです。

ただし、仕入れ価格も高くなる傾向があります。

販売価格へ反映できるかを確認してください。

また、和牛でも部位ごとに用途は異なります。

すべての部位を高級ステーキとして販売できるわけではありません。

和牛のロース芯

交雑牛

交雑牛は、異なる品種を掛け合わせた牛です。

国内では、和牛と乳用種を掛け合わせた牛が多く流通します。

和牛と乳用種の中間的な肉質として扱われることがあります。

向いている用途は次のとおりです。

  • 焼肉
  • スライス
  • ステーキ
  • すき焼き
  • 精肉販売
  • 飲食店の定食メニュー

交雑牛は、価格と肉質のバランスを取りやすい場合があります。

ただし、個体や規格による差があります。

必ず部位、格付、脂の状態を確認します。

ホルスタイン経産牛

ホルスタインは、主に乳用種として飼育される牛です。

経産牛とは、分べん経験のある雌牛を指します。

ホルスタイン経産牛は、和牛と同じ商品ではありません。

和牛の代用品として扱うと、特徴が伝わりにくくなります。

業務用では、赤身系の国産牛原料として考えます。

代表的な用途は次のとおりです。

  • ローストビーフ
  • 薄切り商品
  • 煮込み
  • 牛すじ
  • 牛正肉
  • ミンチ
  • 惣菜原料
  • 加工食品原料

部位や整形状態に合わせて用途を決めることが重要です。

ホルスタイン牛肉の肉質や硬さについては、別の記事で詳しく解説しています。

ホルスタイン牛肉の特徴・肉質・業務用での使い方

牛肉のサーロイン
ホルスタイン経産のサーロイン

輸入牛

輸入牛は、海外を原産地とする牛肉です。

産地、品種、飼養方法によって特徴が異なります。

業務用では、次の用途で広く使用されています。

  • 牛丼
  • ステーキ
  • 焼肉
  • ハンバーグ
  • 加工食品
  • 大量調理
  • 外食チェーン

輸入牛の強みは、価格や供給量を比較しやすいことです。

一方、国産牛としての訴求はできません。

「国産牛使用」を商品の価値にする場合は、国産原料を選びます。

業務用仕入れで見る比較表

種類肉質の傾向販売上の強み主な用途確認事項
和牛サシを評価しやすい高級感、ブランド性焼肉、ステーキ、すき焼き価格を商品価値へ反映できるか
交雑牛脂と赤身のバランス品質と価格の中間焼肉、スライス、精肉販売格付や個体差
ホルスタイン経産牛赤身が多い傾向国産牛赤身原料ローストビーフ、煮込み、加工部位、整形、用途設計
輸入牛規格により幅がある価格、供給量外食、牛丼、加工食品為替、産地、供給条件

この表は、一般的な傾向を整理したものです。

実際の肉質は、個体や部位によって異なります。

商品写真、規格書、格付、整形状態を確認してください。

牛肉を選ぶときの5つの判断基準

1.どのメニューに使用するか

最初にメニューを決めます。

その後で、牛肉の種類と部位を選びます。

例えば、高単価のステーキなら和牛が候補になります。

国産牛ローストビーフなら、赤身部位も候補です。

煮込みや加工原料なら、硬さのある部位も活用できます。

メニューを決めずに牛肉を仕入れると、用途に困ります。

2.いくらで販売できるか

販売価格から仕入れ価格を逆算します。

牛肉の原価だけでなく、次の費用も必要です。

  • 調味料
  • 付け合わせ
  • 包材
  • 人件費
  • 水道光熱費
  • 販売手数料
  • 廃棄ロス

高い牛肉を使っても、販売価格に反映できなければ利益は残りません。

安い牛肉でも、高付加価値の商品を作れる場合があります。

3.歩留りはどの程度か

歩留りとは、仕入重量に対する使用可能重量の割合です。

計算式は次のとおりです。

想定歩留り=使用可能重量÷仕入重量×100

例えば、10kg仕入れて8kg使用できた場合です。

想定歩留りは80%です。

税抜仕入単価が2,000円/kgの場合、使用可能部分の原料単価は次のようになります。

税抜2,000円÷80%=税抜2,500円/kg

これは牛肉原料だけの計算例です。

運賃、人件費、調味料などは含んでいません。

部分肉原価の詳しい計算は、関連記事をご確認ください。

4.整形にどれだけ時間がかかるか

未整形の商品は、kg単価が安く見える場合があります。

しかし、脂や筋を除去すると重量が減ります。

作業時間も必要です。

整形済み商品は、単価が高く見える場合があります。

一方で、次の改善につながる可能性があります。

  • 仕込み時間の短縮
  • 廃棄ロスの削減
  • 使用量の安定
  • 原価計算の簡略化
  • 作業者による品質差の縮小

単価だけでなく、使用可能部分の原価で比較します。

5.継続して仕入れられるか

一度だけ安く買えても、商品を継続できなければ困ります。

次の条件を確認してください。

  • 供給数量
  • 最低ロット
  • 納期
  • 冷蔵・冷凍
  • 規格の安定性
  • 価格改定
  • 代替商品の有無

定番商品では、安定供給も重要な価値です。

業態別の選び方

飲食店

飲食店では、メニュー価格と原価率から逆算します。

高単価メニューには、和牛や交雑牛が向いています。

煮込み、ローストビーフ、牛丼などには、赤身原料も活用できます。

重要なのは、使用する牛肉とメニュー名を一致させることです。

「和牛だから売れる」とは限りません。

顧客が納得する価値を伝える必要があります。

精肉店・スーパー

精肉店やスーパーでは、用途表示が重要です。

牛肉の種類だけでは、顧客は使い方を判断できません。

次のように用途を示します。

  • ステーキ用
  • すき焼き用
  • ローストビーフ用
  • 煮込み用
  • 牛丼用
  • 炒め物用
  • ミンチ用

和牛は、贈答や高級メニューへ向いています。

ホルスタイン経産牛は、国産牛赤身として提案できます。

品種だけでなく、調理後の価値を伝えます。

惣菜製造業者

惣菜では、加熱後の歩留りも重要です。

同じ仕入単価でも、加熱後重量によって原価が変わります。

次の項目を比較します。

  • 原料歩留り
  • 加熱歩留り
  • スライス後の見た目
  • 1食当たりの使用量
  • 味付けとの相性
  • 冷凍・解凍後の状態

整形済み商品は、製造工程を短縮しやすくなります。

食品メーカー・加工業者

食品メーカーでは、規格の安定性が重要です。

確認する項目は次のとおりです。

  • 赤身率
  • 脂肪割合
  • 部位
  • ロット
  • 冷蔵・冷凍
  • 加工適性
  • 原産地表示
  • 継続供給

ハンバーグ、カレー、レトルト食品などは、完成品から原料を設計します。

原料単価だけでなく、製品歩留りまで確認します。

よくある仕入れの失敗

国産牛ならすべて和牛だと思う

国産牛と和牛は同じ意味ではありません。

商品名だけでなく、品種や規格を確認してください。

和牛が必ず最適だと思う

和牛には高い付加価値があります。

一方で、すべてのメニューに必要とは限りません。

販売価格へ反映できるかが重要です。

ホルスタインを和牛の代用品にする

ホルスタイン経産牛は、和牛とは特徴が異なります。

和牛の代わりとして売ると、比較で不利になります。

赤身系の国産牛原料として用途を明確にします。

kg単価だけで比較する

安い商品でも、歩留りが低ければ原価は上がります。

運賃や加工時間も含めて比較してください。

Mマートで確認する7項目

業務用牛肉をMマートで確認する際は、次の項目を見ます。

  1. 牛肉の種類と品種
  2. 部位
  3. 整形状態
  4. 冷蔵または冷凍
  5. 1ケースの重量
  6. 運賃と最低ロット
  7. 想定する用途

商品名に「国産牛」と書かれていても、品種を確認します。

また、同じ部位でも整形状態は異なります。

仕入単価だけで判断しないことが重要です。

国産牛・和牛の違いに関するよくある質問

国産牛はすべて和牛ですか

いいえ。

国産牛には、和牛以外の牛肉も含まれます。

交雑牛や乳用種も、国産牛として流通する場合があります。

ホルスタインは国産牛ですか

国産牛には、和牛以外の牛肉も含まれます。

交雑牛や乳用種も、国産牛として流通する場合があります。

ホルスタインは国産牛ですか

国内で飼養され、国産表示の条件を満たす牛肉は、国産牛として流通します。

ただし、ホルスタインは和牛ではありません。

商品ごとの原産地表示を確認してください。

和牛と国産牛はどちらがおいしいですか

一律には決められません。

品種、部位、個体、調理方法で評価は変わります。

業務用では、メニューとの相性で判断します。

交雑牛は和牛ですか

交雑牛と和牛は、流通上は別の区分です。

仕入れ時には、品種や交配区分を確認してください。

ホルスタイン牛肉は硬いですか

部位や個体によって異なります。

和牛と同じ使い方をすると、硬さを感じる場合があります。

詳しい肉質と用途は、ホルスタインの記事で解説しています。

ホルスタイン牛肉の特徴・肉質・業務用での使い方

まとめ|牛肉原料は用途と利益から選ぶ

国産牛と和牛は、同じ意味ではありません。

国産牛は、主に原産地を示す区分です。

和牛は、品種を示す区分です。

和牛、交雑牛、ホルスタイン、輸入牛には、それぞれ強みがあります。

大切なのは、どれが上かを決めることではありません。

自社のメニューや商品に合う牛肉を選ぶことです。

業務用仕入れでは、次の条件を確認します。

  • 用途
  • 部位
  • 販売価格
  • 仕入単価
  • 想定歩留り
  • 整形状態
  • 作業時間
  • 供給条件

部位を売るのではありません。

その部位から作るメニューを考えます。

さらに、メニューから得られる利益を考えます。

最終的には、顧客の経営改善につながる原料を選びます。

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この記事を書いた人

食肉販売技術管理士。 食肉のプロを養成する学校で「技能賞」を受賞後卒業。関東、関西中心に全国各地で食肉の技術と知識を学ぶ。 国産牛卸の(株)五十嵐商会にて、品質管理室室長を務め、牛の捌きを10年で5万頭の経験。現在は五十嵐商会(株)代表取締役。

近年では、NHK「あさイチ」に出演。「関西じゃらん」の特別付録にて牛肉の寄稿・監修も。

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