「ホルスタイン牛肉の流通量は増えているのか」
「和牛や交雑牛より安く仕入れられるのか」
「飲食店や惣菜製造業者の原料として、今後も安定して使えるのか」
ホルスタイン牛肉を業務用で検討する際、肉質や価格だけでなく、国内の生産量、輸入牛肉との競争、仕入れの安定性まで確認する必要があります。
以前は、和牛や交雑牛の価格上昇を背景に、ホルスタイン牛肉へ切り替える動きが注目されていました。
しかし、現在の市場は単純ではありません。
農畜産業振興機構によると、2025年度の国内牛肉生産量は34万9,872トンで、前年度比1.0%減でした。品種別では、和牛と交雑種の生産量が増えた一方、乳用種は6万9,337トンで、前年度比11.0%減少しています。
つまり、現在のホルスタイン牛肉は、
需要がなくなったのではなく、供給量が減少し、以前より仕入れ条件を確認する必要がある国産牛肉
と考えるのが適切です。
この記事では、国産牛を枝肉で仕入れ、脱骨・整形している五十嵐商会が、ホルスタイン牛肉の国内流通、価格が変動する理由、輸入牛肉との違い、業務用で仕入れる際の注意点を解説します。
結論|ホルスタイン牛肉は「安い国産牛」だけでは判断できない
現在のホルスタイン牛肉は、和牛より価格を抑えやすい場合がある一方で、常に安価で安定供給される商品とは限りません。
業務用で仕入れる場合は、次の5項目を確認する必要があります。
- 乳用種牛肉の供給量
- 枝肉・部分肉の仕入価格
- 部位ごとの整形歩留まり
- 自社メニューとの適性
- 継続仕入れが可能か
ホルスタイン牛肉の強みは、単純な安さではありません。
- 国産牛として提案できる
- 赤身の味を生かせる
- 部位ごとに複数の用途を作れる
- 和牛より料理原価を抑えられる場合がある
- ブロックから加工できれば商品展開を広げられる
という点にあります。
反対に、筋や脂肪の除去量、個体差、加工時間を確認せずに仕入れると、表示価格より実質原価が高くなることがあります。

現在の国内牛肉市場はどうなっているのか
2025年度の国内牛肉生産量は、前年度をわずかに下回りました。
品種別に見ると、次のように動いています。
| 区分 | 2025年度生産量 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 和牛 | 18万5,388トン | 2.4%増 |
| 交雑種 | 9万4,594トン | 1.5%増 |
| 乳用種 | 6万9,337トン | 11.0%減 |
| 牛肉全体 | 34万9,872トン | 1.0%減 |
乳用種牛肉だけが大きく減少しています。
公的統計の「乳用種」には、主にホルスタイン種などの乳用牛由来の牛肉が含まれます。
この生産量の減少は、業務用の仕入れにも影響します。
- 希望する重量がそろいにくい
- 脂肪や肉質の条件を指定しにくい
- 部位によって入荷量に差が出る
- スポット商品が増える
- 市場価格が短期間で動く
- 継続供給の確認が必要になる
以前のように、「ホルスタインだから安い」「いつでも同じ条件で買える」と考えるのではなく、在庫と相場を確認しながら仕入れることが重要です。
牛肉全体の需要も伸び続けているわけではない
2025年度の牛肉の推定出回り量は83万9,481トンで、前年度比0.2%減となり、6年連続で減少しました。
国産品の出回り量は33万8,024トンで前年度比2.2%減、輸入品は50万1,457トンで1.1%増でした。
背景には、物価上昇による消費者の節約志向があります。
牛肉の仕入価格や販売価格が上昇すると、消費者は豚肉や鶏肉へ移る場合があります。
そのため、業務用の牛肉販売では、単に「国産牛」「ホルスタイン」と表示するだけでは不十分です。
- 何人前作れるか
- 1食当たりの肉原価はいくらか
- どの価格で販売できるか
- 端材まで使い切れるか
- 仕込み時間を削減できるか
- 他の部位より利益が残るか
まで説明することが必要です。
輸入牛肉との競争も変化している
2025年度の牛肉輸入量は50万8,087トンで、前年度比0.4%増でした。
ただし、すべての輸入牛肉が増えたわけではありません。
主に店頭販売や外食用に使われる冷蔵牛肉は17万2,943トンで、前年度比7.5%減少しました。
一方、加工・業務用に使われることが多い冷凍牛肉は33万4,885トンで、前年度比4.9%増加しています。
この動きから、業務用市場では次の競争が強まっていると考えられます。
- 輸入冷凍牛肉
- 加工用トリミング
- ミンチ原料
- 冷凍ブロック肉
- 低価格帯の惣菜原料
ホルスタイン牛肉が輸入牛肉と競争する場合、価格だけでは不利になることもあります。
そのため、国産であることに加えて、
- 赤身の味
- 部位が分かること
- トレーサビリティ
- 用途提案
- 部位別の歩留まり
- 必要数量に応じた仕入れ
- 問い合わせ対応
といった価値を伝える必要があります。
ホルスタイン牛肉が業務用で選ばれる理由

1.国産牛を比較的導入しやすい
ホルスタイン牛肉は、和牛より仕入価格を抑えられる場合があります。
そのため、
- 国産牛メニューを作りたい
- 輸入牛肉から国産牛へ切り替えたい
- 和牛では原価が合わない
- 販売価格を上げすぎたくない
という事業者にとって候補になります。
ただし、和牛との価格差は、時期、部位、品質、重量、在庫状況によって変わります。
固定的に「和牛より何%安い」とは断定できません。
2.赤身の味を生かせる
ホルスタイン経産牛は、脂肪交雑の多い和牛とは異なり、赤身の味や肉らしい風味を感じやすい特徴があります。
次のようなメニューと相性があります。
- ローストビーフ
- 牛丼
- 肉うどん
- 煮込み
- カレー
- ハンバーグ
- ミンチ加工品
- 焼肉
- ステーキ
- 惣菜原料
ただし、部位によって硬さ、筋、脂肪量が異なります。
サーロイン、リブロース、モモ、ウデ、ブリスケット、すねでは、同じ調理方法は使えません。

3.ブロックから複数の商品を作れる
五十嵐商会では、基本的に業務用ブロックで販売しています。
スライス加工には対応していません。
購入後に自社で小割、筋引き、スライス、ミンチ加工ができる事業者であれば、一つのブロックから複数の商品を作れます。
例えば、モモ系ブロックであれば、
- ローストビーフ
- ステーキ
- 焼肉
- 切り落とし
- ミンチ
- 煮込み
などへ振り分けられます。
利益を残すには、主商品だけでなく、端材まで含めた用途設計が必要です。

ホルスタイン牛肉が以前より高くなる理由
ホルスタイン牛肉の価格は、品種名だけで決まりません。
主に次の要因で変動します。
供給量の減少
乳用種牛肉の生産量が減れば、市場に出る枝肉や部分肉も減ります。
買い手が多い部位では、供給量が少ないほど価格が上がる可能性があります。
飼料・生産コスト
牛の飼育には、飼料、電気、燃料、人件費、設備費などがかかります。
生産者側の費用が増えれば、枝肉価格や部分肉価格にも影響します。
運賃と加工費
枝肉や部分肉は、仕入価格だけでなく、次の費用が発生します。
- 市場手数料
- と畜費
- 運送費
- 脱骨加工費
- 包装費
- 段ボール代
- 冷蔵・冷凍保管費
- 販売手数料
遠方から仕入れる場合は、運賃が1kg当たり原価へ大きく影響します。
部位ごとの販売バランス
枝肉で仕入れる場合、サーロインやモモだけを仕入れることはできません。
一頭から、
- ロース
- モモ
- ウデ
- バラ
- すね
- 牛すじ
- 脂肪
- 骨
などが発生します。
売れやすい部位だけでなく、低回転部位も販売できなければ、枝肉全体の利益は残りません。
業務用で仕入れる際に確認する7項目

1.品種と牛の区分
「国産牛」と表示されていても、和牛、交雑牛、乳用種では肉質が異なります。
ホルスタインでも、
- 去勢牛
- 未経産牛
- 経産牛
- 肥育期間
- 飼い直しの有無
などによって肉質が変わります。
商品名だけでなく、牛の区分を確認します。
2.冷蔵または冷凍
冷蔵は、肉の状態を確認しやすい反面、納品後の使用期限と在庫回転が重要です。
冷凍は、保管しやすい反面、解凍方法やドリップを確認する必要があります。
自社の使用量と納品頻度に合わせます。
3.ブロック重量
同じ部位でも、牛の大きさによって重量は変わります。
1本当たりの重量が大きすぎると、使い切るまでに時間がかかります。
反対に小さすぎると、必要数量をそろえるために本数が増え、作業負担が増えます。
4.整形状態
- 脂肪がどの程度残っているか
- 筋引き済みか
- 骨肌や軟骨が残っていないか
- 表面の膜が残っているか
- 変色や乾燥がないか
を確認します。
整形状態によって、購入後の作業時間と歩留まりが変わります。
5.使用可能部分原価
仕入単価だけでなく、筋や脂肪を除去した後の原価を計算します。
使用可能部分原価
=仕入総額÷整形後に商品として使える重量
例えば、10kgを税抜2,000円/kgで仕入れ、整形後に8kg残った場合、
税抜20,000円÷8kg=税抜2,500円/kg
となります。
表示単価は税抜2,000円/kgでも、実際に使用できる部分の原価は税抜2,500円/kgです。
※上記は計算方法を説明するための仮定例です。実際の価格や歩留まりではありません。
6.継続供給
メニューへ採用する場合は、1回購入できるだけでは不十分です。
- 毎週入荷するか
- 月間何kg確保できるか
- 重量や脂肪量をそろえられるか
- 価格改定の可能性があるか
- 欠品時の代替部位があるか
を確認します。
スポット商品は、限定メニューや短期販売には使えますが、定番メニューには注意が必要です。
7.用途と販売価格
仕入れる前に、次を決めます。
- どのメニューへ使うか
- 1食に何g使うか
- 販売価格はいくらか
- 原価率はいくらか
- 何食販売すれば使い切れるか
- 端材をどこへ使うか
「安いから仕入れる」のではなく、利益が残るメニューを先に設計します。
ホルスタイン牛肉が向いている事業者
飲食店
- 国産牛メニューを導入したい
- 和牛より原価を抑えたい
- 自社でブロックを加工できる
- 牛丼、煮込み、ローストビーフを提供する
- 部位ごとにメニューを変更できる
惣菜製造業者
- 牛丼や肉うどんの原料を探している
- ミンチや切り落としを使用する
- 煮込みや弁当へ展開する
- 加熱後歩留まりを管理できる
- 複数部位を使い分けられる
精肉店
- ブロックから小売商品を作れる
- 筋引きやスライス設備がある
- 赤身牛肉の品ぞろえを増やしたい
- ステーキ、焼肉、切り落としへ分けられる
- 端材をミンチへ加工できる
食品メーカー
- 継続的な原料数量が必要
- 規格書や原産地確認が必要
- 冷凍原料を使用できる
- ミンチ、煮込み、味付け加工を行う
- ロットと原価を管理できる
ホルスタイン牛肉が向かない場合
次のような事業者には、ブロック販売のホルスタイン牛肉が合わない場合があります。
- スライサーや包丁加工の設備がない
- 筋引きや整形を行う人員がいない
- 完全に同じ重量・形状を毎回必要とする
- 霜降りの柔らかさを最優先する
- 小量だけをすぐに使用したい
- 端材を活用できない
この場合は、加工済み商品、スライス商品、規格肉などを選ぶ方が、総原価を抑えられる可能性があります。
五十嵐商会の現場で感じる現在の変化
五十嵐商会では、ホルスタイン経産牛を中心に枝肉で仕入れ、脱骨・整形して業務用部分肉を製造しています。
現場では、ホルスタイン牛肉を単に「安い牛肉」として扱うことはできなくなっています。
供給量、枝肉価格、運賃、加工費が変動する中で、次の判断が重要になっています。
- どの産地・市場から仕入れるか
- 一頭から取れる重量はどれくらいか
- どの部位が売れやすいか
- 低回転部位をどう販売するか
- 筋や脂肪をどこまで商品化するか
- 端材をミンチやコマ材へ使えるか
- 部位別にどれだけ粗利益が残るか
ホルスタイン牛肉の価値は、一つの部位だけでは判断できません。
枝肉全体を、
- サーロイン
- リブロース
- モモ
- ウデ
- ブリスケット
- すね
- コマ材
- ミンチ原料
- 牛すじ
へ分け、それぞれに適した顧客と用途を作ることで利益が残ります。
今後のホルスタイン牛肉市場をどう考えるか
今後、ホルスタイン牛肉は「安価で大量に流通する牛肉」というより、
限られた国産乳用種牛肉を、部位・用途・歩留まりに合わせて使い切る商品
として考える必要があります。
2025年度は乳用種牛肉の生産量が前年度比11.0%減少しています。
供給量が減れば、以前と同じ価格や規格で仕入れ続けることは難しくなる可能性があります。
その一方で、
- 国産牛を使いたい
- 和牛ほど高い原料は使えない
- 赤身肉をメニューに取り入れたい
- 部位ごとに商品を開発したい
という需要は残ります。
今後重要になるのは、価格競争ではありません。
- 原料の特徴を説明できる
- 適した用途を提案できる
- 歩留まりを計算できる
- 端材まで活用できる
- 継続供給と代替部位を相談できる
という卸売業者の提案力です。
よくある質問
- ホルスタイン牛肉の流通量は増えていますか
-
現在は増えているとは言えません。
2025年度の乳用種牛肉の生産量は6万9,337トンで、前年度比11.0%減少しています。
- ホルスタイン牛肉は和牛より安いですか
-
和牛より価格を抑えられる場合があります。
ただし、供給量、部位、品質、重量、運賃、加工費によって変わるため、常に安いとは限りません。
- ホルスタイン牛肉は輸入牛肉より高いですか
-
商品によって異なります。
輸入冷凍牛肉や加工用トリミングは価格競争力がある場合があります。
ホルスタイン牛肉は、国産、部位の明確さ、用途提案などを含めて比較します。
- ホルスタイン経産牛は硬いですか
-
部位や個体によって硬さがあります。
筋、繊維方向、肉の厚さ、加熱方法を確認することで活用できます。
ホルスタイン牛肉全体の特徴は、別記事で詳しく解説しています。
- どの部位がローストビーフに向いていますか
-
うちもも、しんたまなどのモモ系部位が候補になります。
肉質、筋、形状、加熱後歩留まりを確認して選びます。
- 五十嵐商会ではスライス加工を行っていますか
-
五十嵐商会では、基本的に業務用ブロックで販売しています。
スライス加工には対応していません。
- Mマートで購入できますか
-
掲載中の商品は、Mマートから購入できます。
在庫、価格、重量、最低ロット、送料は商品ページでご確認ください。
まとめ|ホルスタイン牛肉は供給量と実質原価で判断する
現在のホルスタイン牛肉市場では、乳用種牛肉の生産量が減少しています。
そのため、以前のように「安い国産牛」として一律に判断するのではなく、次を確認する必要があります。
- 供給量と在庫
- 部位と肉質
- ブロック重量
- 整形歩留まり
- 使用可能部分原価
- メニューと1食原価
- 継続供給の可否
ホルスタイン牛肉は、和牛と同じ使い方をする商品ではありません。
赤身、筋、脂肪、部位の特徴を理解し、ローストビーフ、牛丼、煮込み、ミンチ、惣菜などへ使い分けることで価値が生まれます。
仕入価格ではなく、
どのメニューを何食作り、最終的にいくらの利益を残せるか
で判断することが重要です。

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五十嵐商会では、ホルスタイン経産牛を中心とした国産牛肉を、業務用原料としてMマートにて販売しています。
ローストビーフ用うちもも、惣菜加工用ミンチ原料、赤身リブロース、サーロインステーキなど、用途に合わせた商品をご確認いただけます。
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