牛肉のシンシンとは、ももを分割したわずかしか取れない部位のことを言います。
牛の半頭から約10%ほどしか取れないため、希少価値の高い部位。
ただ、シンシンは運動をよくする部位として非常に硬い部位になりますので、選び方が難しい部位になります。
希少性が高い部位であるため価格が変動しやすく、硬い肉なので扱いが難しい部位ということです。
牛肉のプロが詳しく『シンシン』についてご紹介していきますので是非とも参考にしてくださいね。
- シンシンの特徴とは?
- シンシンの相場価格。
- 牛肉の品種による違いでシンシンはどのように違うのか。
- シンシン部位の取り扱いかた。
- シンシンの調理の仕方。
この5つの事を知ることで『シンシン』の選び方にいかすことができます。
シンシンとは?
『シンシン』とは、もも肉の部位である『しんたま』という部位の中の、ほんのわずかしかとることができない希少価値の高い部位です。
和牛のシンタマは約10kg取れますが、シンシンは1kg~2kgしかとれない部位になります。
比率でいうと10%~20%といったところです。
もも部位ならではの、赤身肉の代表的な存在であり、味わいがあっさりしているにもかかわらず肉の味がギュッと閉じ込められているため、食べた時に肉の濃厚な旨みが口の中いっぱいに広がります。
牛肉の味わいの秘密には、肉そのものの水分量が関係してきます。
肉の水分にはうま味成分が含まれ、牛のもも部位には牛全体の40%の水分量があると言われています。
もも部位のほんのわずかな部位のシンシンには、肉のうま味が濃縮された「肉の一番搾り」と言えます。
シンシンという名前の由来とは?
シンシンという名前の由来は、玉のような丸い形をしていて、もも部位の中の真ん中あたりから取れるということもあって、「中心のさらに中心」という意味でシンシンと名付けられたとされています。
漢字で書くと『芯芯』です。
もも部位の中にあるシンタマを、さらに小分けしたものが『シンシン』になります。
シンタマは漢字で書くと『芯玉』。
その中心部が『芯芯』というわけです。
シンタマは、関東方面では『芯玉』、関西方面では『丸芯』と呼ばれ、シンシンは関東では『芯芯』、関西では『マルシン』と言われています。
少し複雑にはなりますが、現在では「シンシン」が全国的に通り名となっています。
シンシンを英語では『Tip(チップ)』ともいわれていますが、これは「切り取った」という意味なので、正式な名称は現在では見当たりません。
ですから、シンタマを切り取った肉という表現で英語では「Knuckle tip(ナックルチップ)」となります。
ナックルとはシンタマという意味ですが、アメリカやカナダではこのように読みます。
また、オーストラリアやオセアニアでは「Thich Flank(シックフランク)」、フランスでは「Tranche・grass(トランシュ・グラース)」もしくは「Aiguilette・baronne(エギュイエット・バロンヌ)」と呼ばれています。
シンシンのお値段は?
シンシンを単体で購入すると、全国的な平均価格は以下のようになります。
- 和牛:1kgあたり10000円~17000円
- 国産だと安いものでも1kgあたり6000円~14000円が相場だといわれています。
- 輸入牛:1kgあたり5000円~10000円
例えば1枚あたり100gのステーキで購入すると、和牛の高値では1枚1700円になります。
シンシンが高額な理由とは?
何故シンシンがこのような高額になるかというと、希少価値の高い部位だからという理由だけではありません。
本来小分けしなくてもよい部位であるため、作業量と作業時間がかかるからです。
手間暇をかけて作業するものは価格にも影響しますし、実際には基準になる価格もありません。
牛肉の部位には「もも」といった部位が存在しますが、「市場価格」という基準が設けられているため価格の相場というものが存在します。
しかし、シンシンのように小分けしたものには基準になる価格があるわけではありません。
ですから、小分けをして自分達で価格を決定し、利益を確保しているのです。
シンシンはどこで買えるの?
シンシンは、技術と知識がないと商品にはなりません。
何故なら、繊細なナイフの使い方と小分けした部位の形や肉質などの特徴を知り尽くしてなければならないからです。
また、シンシンの大元である「シンタマ」にはスライスしたものが売られています。
こま切れや薄切りといった、よく売れる商品にしたほうが業者にとっては都合がよいので『シンシン』だけというのは一般的には販売されない傾向にあります。
「シンシンだけください!」
と言っても、お店にとっては他の部位が余ってしまうため、「時間がかかりますよ」と言われて嫌がられるのが大抵です。
ですから、技術と知識と販売力があるお店選びが大切となってきます。
また、地元で販売されていなければ通販ショップを選ぶとよいでしょう。
例えば、肉の卸業者の肉贈では、問屋さんならではの販売力と技術だけでなくシンシンのよい部分をうまく生かし切って販売されています。
また、「松坂牛専門店やまと」は40年以上松坂牛の専門店として販売されていることから肉の選び方と技術は、同業者でも有名なお店になります。
他にも神戸牛専門店 辰屋でもひじょうにやわらかいシンシンが選ぶことができます。
他の部位と比較するとどれくらい柔らかいの?
牛肉には様々な部位が存在します。
代表的な部位を表にあらわすと以下のようになります。
牛肉の肉質は、腰のあたりから足にかけて硬くなっていきます。
それはよく動くことによって筋肉が硬くなるからです。逆に動いてなければ硬くなりにくいです。
部位名で言うとサーロインからすねということです。
ちなみにサーロインは、別名腰肉といわれています。
サーロインステーキとあるように「ステーキ」とは、分厚く切っても硬くないため食べられます。
「すね」部分の肉は硬いため、スープのだしによく利用されるます。
煮込まないと柔らかくならいため、柔らかい部位は分厚く切って商品になります。
また、硬い部位は、薄く切ってスライスにして販売されたり、炒めもの用や煮込み料理に使われます。
シンタマは腰肉からすね肉の中間あたりにある部位なので、硬い部位としてしゃぶしゃぶ用などの薄切り使用されるのがほとんどです。
ただし、これだけでは硬いという表現がおかしなことになります。
シンシンには、ステーキとしても販売されていることもあるからです。
実は、硬さというものは場所だけでなく筋肉としてどれだけ動いているかで決まってきます。
まったく動かない筋肉の代表は、「ヒレ」になりますが、シンシンも同様であまり動いていない部位なのです。
それはももの中の中心部分にあるからです。
シンシンはスネとサーロインの中間あたりにある部位なので、お尻のお肉よりは硬いですが、比較的に柔らかい部類に入るのではないでしょうか。
和牛と輸入肉での違いはあるの?
では、和牛と輸入肉ではどのように違うのでしょうか?
和牛のシンタマをみてみましょう。
この写真のシンタマは直径約30cm、周囲は約60cmあり、一般で使われるサッカーボールほどあります。
かなりの大きさがわかると思いますが、一番の違いは大きさです。
輸入牛肉の場合は、和牛と比べシンタマ部位自体が非常に小さくなります。
和牛のシンタマは平均的に8kg~10kgほどありますが、輸入牛肉は約4kg~5kgほどになります。
前述にありましたが、シンシンは本体の10%ほどしかありません。よって輸入肉では、1kgも満たないような大きさになってしまい焼肉やステーキとは言えない状態になります。
また、色合いや肉質の違いもあります。
和牛はうすいピンク色になりますが、輸入肉は赤黒い色合いになります。
和牛と輸入牛で違いが出る理由とは?
シンタマの色や肉質に違いがでる理由は、日本と海外では牛の育て方に違いがあるためです。
日本では、狭い土地であるため放牧することはあまりしておらず、ほとんどの牛は狭い柵の中で育ちます。
しかし、海外は放牧が主流になります。
日本で育てられた牛は、あまり動かないため、肉質が硬くなりにくいのです。
さらに、肉の中に脂肪がはいるように独特な育て方とエサの与え方をしています。
ここ10年で、オーストラリア産の牛肉は「wagyu」とあるように、日本の和牛の育て方を研究し、日本の和牛のような味わいを出せるようになってきました。
海外の牛肉が日本でも受けいられるようになったのは、このためです。
少し脱線しましたが、和牛と輸入肉のシンシンの違いは、大きさ、色合い、肉質が違います。
プロが教える!シンシンの選び方のコツとは?
シンシン肉は、選び方のポイントがあります。
焼肉やステーキとして食べる場合は、大きさや肉質から見ても和牛の選択が一番良いと言えます。
ただ、和牛のシンシンだからといって、安心はできません。
なぜなら、シンシンの中でも硬いところと柔らかいところがあるからです。
それでは実際の写真を使って解説してみます!
写真にある4の部分は非常に柔らく、3~2にかけて硬くなっていきます。
と言ってもわかりづらいかもしれませんが、シンシンが一番おいしく堪能できるのは中心部分です。
正直、和牛でも端っこは硬くて食べづらく、肉の味が感じられないからです。それではシンシンをおいしく食べれないと思います。
芯芯の芯がよいのではないでしょうか。
肉の専門家『直伝』!美味しく調理するための秘訣とは?
シンシンをおいしく調理するにはどうしたらよいでしょうか?
実は、美味しくするポイントは、焼き方を知ることではなく「シンシンの特徴を知ること」なのです。
シンシンを美味しく調理するためには、豊富な水分量の扱いと肉の繊維やすじがポイントになります。
シンシンの豊富な水分の中には、肉のうま味成分オレイン酸が大量に含まれています。
強火で一気に焼いてしまうと、水分が一気に飛び、蒸発してパサついたお肉になってしまいます。
旨みも肉から抜け出してしまうので、おすすめできません。
シンシンのすじや繊維は、火で焼くと一気に縮みます。
ですから火で焼く場合は、炙る程度でよいです。
旨みを逃さずに食べるなら、炙り焼きにするか、焼きすぎないことが大切です。
ちなみにシンシンの濃厚な味わいをベストに保つには、ローストビーフが一番良いと個人的には思っています。
ももの水分量は栄養価も高いため、火を入れすぎると栄養価まで変わってしまいます。
殺菌効果の高い火を入れることは大切ですが、肉の中心は無菌状態です。
ローストビーフは、損なうことなく、夏バテ予防としてもサラ外側だけ焼き上げ栄養価をダとしても最適です。
濃厚な味わいのシンシンは食欲が湧き、サラダのお供として夏の食材としても最高なのではないでしょうか。
ローストビーフの調理の仕方についてはこちらで紹介しています。
まとめ
お肉屋さんやスーパーなどで売られているしゃぶしゃぶ用などのスライス肉は「シンタマ」の部分が使われています。
『シンシン』のみでは一般販売されていないことが多いですが、技術と知識と販売力があるお店では購入が可能です。
ただし、価格でいえば「シンタマ」の卸値は、1kgあたり1600円~2600円程度ですが、シンシンのみで購入すると5倍以上になってしまいます。
希少部位であり、ヒレ並の高級肉としても扱われる『シンシン』は、肉好きにとっては一度は食べたいと思うかもしれません。
シンシンは『肉の一番搾り』です!
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