牛肉の部位名を英語で伝えるときは、呼び名に加えて、どこからどこまでを切った肉かを確認する必要があります。国内の13区分、地域の通称、海外の取引規格は同じ体系ではありません。元の部位図・写真と14の名称表を見ながら、用途と発注条件を整理します。
国内13区分と海外名・地域名を分けて見る
日本食肉格付協会の牛部分肉取引規格の13区分を基本に、小割りや販売上の呼称も紹介します。まえすね・ともすねの表を分けているため表は14ですが、規格上の13区分が14に増えたという意味ではありません。地域の呼び名は例で、全国一律の法定名としては扱いません。
英語呼称は照合の入口です。米国・豪州・英国などでは分割位置や骨付き/骨なし、脂・筋の整形条件が違います。MLAの販売・カット資料等で原料の規格を確認し、英語名だけで同じ範囲の商品と決めないでください。


上の部位図は元記事の呼称・分割の参考図です。現在のすべての国・規格に共通する対応表ではありません。写真は掲載時の原料例で、現在の在庫・格付・品質保証を示しません。
ネック
牛の首の部分で、肩ロースに近接している部分になります。
運動をよくする部分ですから、肉色は濃いめできめは粗く、肉質は硬い部位です。
しかし、ほとんどが赤身ですから、ひき肉にするのに最適な部位と言えます。
また、豊富なエキス分、ゼラチン質を持っていますので、煮込みにしますと「すね」と並んで良いスープストックの素材となります。

| 名称 | ネック |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ネジ |
| 英語呼称の参考 | ネック(neck) |
うで(かた)
うでの部分を総称して牛うで(かた)と呼んでいますが、みすじ、さんかく、とうがらしなどの数多くの筋肉の集合体です。
総じてよく運動する部位ですから、筋肉や腱などが多く、肉色はやや濃いめです。従って、きめが粗く肉質も硬い部位に属します。
エキス分やゼラチン質は豊富ですから、煮込み料理やスープの材料としても最適です。また、筋膜や腱を取り除いて薄切りにしますと、硬さに難はなく相当広い範囲の牛肉料理に利用できます。
小割りでは、みすじ・かたさんかく・うわみすじ・こさんかく等の呼称が使われます。とうがらしを含めるかなど、セット規格は仕入先ごとに確認します。


| 名称 | かた(うで)、小割りの例:とうがらし |
|---|---|
| 地域呼称の例 | かた、とんび |
| 英語呼称の参考 | クロッド(clod)、チャックテンダー(chuck tender) |
エムマート(牛肉市場)|牛肉のうで(かた)部位の整形・すじ引き方法とは?
肩ロース
肩に位置するロース部位で、胸最長筋の先端部分がここからリブロース、サーロインにかけて長く続いています。
肩ロースには複数の筋肉と筋があり、位置・個体・整形状態で食感は異なります。ロース芯と周辺を同じ肉質とみなさず、切る方向や厚みを用途に合わせます。
脂肪交雑の入り方は品種や個体、格付等によって異なります。和牛・国産・輸入の呼び名だけで味や品質の優劣を決めません。
薄切りはすき焼き・しゃぶしゃぶなど、筋の位置を確認して切り分けたものは焼肉などが候補です。厚切りでも一律に柔らかいとは限りません。

| 名称 | かたロース |
|---|---|
| 地域呼称の例 | くらした |
| 英語呼称の参考 | チャックロール(chuck roll) |
エムマート(畜産市場)|肩ロースで海外でのステーキを作る方法とは?
かたばら
かたの部分にあるばら肉で、厚みのあるのが特徴です。
胸骨の部分にある「むねこぶ」と呼ばれるばらの先端部は、肥厚して硬い部分となります。
肩に近い部分と胸側では筋・脂の入り方が異なります。ショートリブ等の海外名は、国ごとの骨や肋骨の範囲、分割規格を照合して使います。名前だけでリブロースと同じ価格・価値と判断しません。


カルビ用の一部として使われますが、カルビは一つの規格部位に限定される名称ではありません。薄切りでも筋の量や切る方向で食感は変わります。
筋や骨を含む規格は煮込みの候補です。汚染・異物・不要な筋や脂は確認し、用途に必要な整形を行ったうえで十分に加熱します。
牛肉好きの通は、この部位を高く評価して賞味しています。
| 名称 | かたばら |
|---|---|
| 地域呼称の例 | うでばら(地域によってはブリスケとも呼びます) |
| 英語呼称の参考 | ブリスケット(brisket)、ポイントエンド |
ともばら
リブロースとサーロインに接続するかたばらの後方に位置します。通常、「ばら」と呼ばれているのは、この部位のことです。
総じて、繊維質、筋膜が多く、肉のきめは粗い部分ですが、よく脂肪交雑が入り、濃厚な風味をもっています。
薄切りや煮込みにすれば調理上難はありません。大衆的な牛丼や焼肉は、おおむねこの部位を一般的に使用しています。
また、肋骨をばらに付けて骨付き状態のままカットしたものは、煮込みにしますと濃厚なスープがとれます。
煮込みの仕上がりは、筋・脂の量と原料の大きさ、加熱条件で調整します。

| 名称 | ともばら |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ともばら |
| 英語呼称の参考 | ネーブルエンド(navel end) |
ヒレ
ヒレは腰の内側にある、きめが細かく柔らかさが特徴の部位です。得られる割合や現在価格は、枝肉・正肉などの分母、整形状態、個体・取引時点で変わるため、ここでは固定比率や一律の価格順位を示しません。
ヒレ本体には、脂肪はほとんどありません。ヒレを覆うように腎臓脂肪の一部とその周辺の脂肪が付着していますが、精肉にする際にこれらもほとんど除去されます。
肉の断面は、ビロード状にきめが細かく見えます。
このようにきめの極めて細かい部位を調理する際には、煮すぎたり焼き過ぎたりしないことです。過度に加熱すると、表面が硬くしまり、本来持つ風味を損ないます。
焼き加減の呼び名や見た目は安全性の判定基準ではありません。加熱用は中心温度と保持時間を確認し、十分に加熱します。筋切り・結着・注入等の処理の有無も確認してください。
ヒレの名の由来は、フランス語でこの部位のことを「フィレ」と呼ぶことから「ヒレ」となりました。
次の図に出てくる呼称は、フランス料理名の一端にでてくることがあります。幅の広い部分は薄く、狭い部分は厚切りにして目方をそろえて使うと良いでしょう。

図の②~④は、元資料でクール・フィレと呼んでいる範囲です。料理名と取引規格を同じ区分として扱わず、発注時は図や現物で範囲を照合します。

| 名称 | ヒレ |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ヘレ |
| 英語呼称の参考 | テンダーロイン(tenderloin) |
リブロース
胸最長筋の最も肉厚の部分です。
脂肪交雑や外側の脂の量は個体・格付・整形で異なります。
原料の肉質や筋の位置を確認して使います。「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」「ローストビーフ」「ステーキ」などの代表的な牛肉料理に最適な部位です。
オーストラリア産のリブロースは、外側の「かぶり」と呼ばれる部分を除去し、ほとんどロースの芯(胸最長筋)の部分にしたものを「キューブアイロール」と呼んでいます。
米国のリブアイロール、豪州のキューブロール等は、かぶりや筋の除去、規格番号を含めて比較します。同じ通称でも整形範囲がそろっているとは限りません。


| 名称 | リブロース |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ロース頭、リブ |
| 英語呼称の参考 | リブアイロール(ribeye roll)等。国・整形規格で確認 |
サーロイン
リブロースとらんいちの間に位置する背腰部の部位です。国内でいうサーロインと、海外のsirloin・striploinの指す範囲は国や規格で異なるため、名称だけの一対一対応を避けます。
| 名称 | サーロイン |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ヘレした |
| 英語呼称の参考 | サーロイン(sirloin)、ストリップロイン(striploin)。国により範囲が異なる |

代表的なステーキ部位で、通常、サーロインステーキというとよく知られたステーキ名です。
レストランなどでこのステーキを注文しますと、ウエイターに「焼き加減」を尋ねられます。
焼き加減を選べることが、どんな加熱状態でも安全である証拠にはなりません。以下は料理上の呼称の例です。
焼き方は、おおよそ次のような呼び方でその程度を表します。
- ベリーレア(ほとんど生焼け)
- レア(生焼け)
- ミディアムレア(中位よりやや生焼け)
- ミディアム(中位の焼き加減)
- ウェルダン(よく焼けたもの)
サーロインを骨付きのままでステーキ・カットしたものを食べる機会がありますが、代表的なカットの仕方には次の2つあります。
ティーボーンステーキ
サーロインに骨を付けたまま、内側に付いているヒレを同時にカットしたものです。
断面の骨の形状がT字型をしているので、このように呼ばれています。
風味のよいサーロインと柔らかいヒレが同時に味わえる、極めて豪華な最高のステーキカットです。
骨付き牛肉の取扱い・輸入条件は、国・品目・骨の範囲・現行制度で確認します。過去のBSE対策だけを根拠に、現在も一律に販売できないとは説明しません。
エルボーンステーキ
サーロインについた骨がL字型に残るようにカットしたものをエルボーンステーキと言います。
Lボーンをトマホークの別名とは扱いません。トマホークは長い肋骨を残した骨付きリブアイの特殊規格です。
英国の格言で「肉は骨に近いほどうまい」というものがあります。骨に沿ってきれいに肉をはがしながら味わいますと、本当の牛肉のうまみに出会ったと感激することでしょう。
骨についている骨膜、そして筋膜などが牛肉の味を一層引き立ています。
うちもも
モモ系の部位の中では、最も重量的に占める割合の高い部位です。内側に付着している皮下脂肪を取り除けば、ほとんどが赤身肉の塊です。

赤身を好む人には最適の部位です。
形を整えたブロックはローストビーフ等の加熱料理の候補です。柵取りや表面加熱だけで、加熱用原料を生食・たたきとして提供できるわけではありません。
アメリカでは赤身中心の健康志向から、ラウンドステーキとして人気がある部位です。
| 名称 | うちもも |
|---|---|
| 地域呼称の例 | うちひら |
| 英語呼称の参考 | トップサイド(topside) |
しんたま
うちももとはほぼ同様の肉質を持つ赤身中心の部位です。
周辺の「かぶり」と呼ばれる部分は、やや肉のきめは粗いのですが、その内側はきめが細かく柔らかいです。
小割りにはしんしん・かめのこ・ともさんかく等の呼称があります。筋肉と整形に応じ、焼肉・薄切り等へ用途を分けます。

| 名称 | しんたま |
|---|---|
| 地域呼称の例 | マル |
| 英語呼称の参考 | シックフランク(thick flank) |
らんいち
サーロインに接続する部位で、モモ系の部位の中では背側に位置し、「らんぷ」と「いちぼ」と呼ばれる大きな筋肉の塊から構成されています。
また、らんいちは、ロイン3点の高級部位に次ぐ準高級な部位として評価の高いところです。

背脂肪を除去すれば、ほとんど筋間脂肪もない柔らかな赤身肉です。
ステーキメニューのうち、サーロインと同様に「ランプステーキ」はよく知られています。ほとんどの牛肉料理に適していますが、特に焼く料理に最適な部位です。
| 名称 | らんいち(らんぷ・いちぼ) |
|---|---|
| 地域呼称の例 | らむ |
| 英語呼称の参考 | ランプ(rump) |
そともも
モモ系の部位では最も運動量の多い部位です。従って、全体的に肉のきめが粗く、肉質はやや硬い部位となりますが、薄切りや煮込みに用いれば問題ありません。

そとももは、「はばき」「しきんぼう」「なかにく」の3つにわけられます。
「はばき」は、すねに近い特質をもっています。
「しきんぼう」は、最もきめの粗い部位ですが形状が整っていますので、使用目的によっては利用範囲が広がります。
「なかにく」は、きめはそれほど粗くありませんので、一般的な牛肉料理に利用できます。
塩漬け加工などに使われる例もありますが、原料・塩分・温度・包装等で条件は異なります。一律の塩漬け日数や家庭での保存期限を示す説明には使いません。
また、肉質が硬いにもかかわらず好んでこの部位を調理の素材として利用しています。
| 名称 | そともも |
|---|---|
| 地域呼称の例 | そとひら |
| 英語呼称の参考 | シルバーサイド(silverside) |
すね(まえすね・ともずね)
前肢のまえすね、後肢のともすね(ともずね)を合わせて、規格上は「すね」と扱います。筋肉や筋の構成は同一ではないため、原料の状態・脂や骨の有無・用途で選びます。
運動量の多い部位ですから肉のきめは粗く、肉質は硬いところです。
また、筋膜、腱なども多く介在していますが、エキス分やゼラチン質に富んでいます。
そのため、レストランなどでは、骨付きの状態のまま煮込みます。肉はほとんど赤身ですから、ひき肉や煮込み料理にはむしろ貴重な部位として高く評価されています。
すね肉と、整形で得られる筋・腱を中心とした「牛すじ」は、販売規格を分けて確認してください。
| 名称 | まえすね |
|---|---|
| 地域呼称の例 | (まえ)ちまき |
| 英語呼称の参考 | シン(shin) |

| 名称 | ともずね |
|---|---|
| 地域呼称の例 | ともちまき |
| 英語呼称の参考 | シャンク(shank) |

仕入先に伝える規格・確認事項
国内名と英語名のほか、原産国・畜種、規格番号やカット図、骨付き/骨なし、かぶり・脂・筋を残す範囲、冷蔵/冷凍、原料ブロックかカット済みか、必要重量と用途を伝えます。たとえば「ロース」「カルビ」「sirloin」だけでは範囲がそろわない場合があります。
Mマートは食材等を仕入れる企業・店舗・組織・団体向けで、購入には会員登録が必要です。家庭の一般消費者向けの購入案内ではありません。商品ごとの原料・加工状態、冷蔵/冷凍、不定貫重量、最低ロット、税込/税別、送料、出荷日と到着見込みを確認し、在庫・納期や希望規格が不明な場合は注文前にお問い合わせください。
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加熱と骨付きカットの補足
部位の柔らかさや焼き加減の名称だけで安全性は判断できません。厚生労働省の食中毒予防を参照し、加熱用は中心まで十分に加熱してください。米国食肉輸出連合会の2026商品化資料(22頁)では、トマホークを骨付きリブアイの特殊規格として紹介しています。元記事にあったLボーンとの同一視は避けます。
まとめ
まず国内の規格区分と小割り名を分け、海外名は国・カット範囲・整形条件と組み合わせて照合します。部位図や写真を仕入先と共有し、用途・量・加工負担まで確認することが、名称の行き違いを防ぐ判断材料になります。
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