ランイチを一本で仕入れると、ランプやイチボだけでなく、整形や小割の作業も考える必要があります。ステーキ用だけを取り、残りの用途を決めていなければ、思ったほど原価が下がらないこともあります。
この記事では、ランイチの整形・筋引き・分割から商品化までを、元記事の36枚の写真に沿って説明します。部位の違いを知るだけでなく、自店の技術・作業時間・販売計画に合う原料かを考えるための技術例です。
ランイチは、ランプとイチボを含む部分肉
ランイチは、サーロインに続くおしりのあたりの部分肉です。日本食肉格付協会の牛部分肉取引規格にも「らんいち」があり、小割してランプやイチボなどを商品化します。取引先によって呼び方や整形状態が異なるため、注文時は名称と仕様を照合します。
ステーキ、焼肉、薄切り、煮込みなどに使い分けられますが、どの個体・どの部分も同じ柔らかさではありません。サーロインより必ず安い、もも肉で最もおいしい、といった固定順位で判断せず、肉質・脂・すじ・価格・売り先を合わせて確認してください。
写真の数値と作業条件の読み方
以下の脂肪3mm・5mm、すじを除く5cm・15cmなどは、掲載写真の原料と商品づくりに合わせた目安です。全商品に共通する取引規格や、必ず守る切断寸法ではありません。実際の筋や繊維、脂肪の状態を見て、仕様に合わせて調整します。
刃物やスライサーを扱う作業は、教育を受けた担当者が施設の安全手順に従って行ってください。原料の指定温度と作業時間を管理し、清潔な器具を使います。生肉の肉汁や器具を、加熱済み食品に接触させないように区分してください。
本文の「クーレット」は写真Bを示すための本記事内の呼称です。海外のカット名が国内の小割と常に一致するという意味ではありません。また、カットの厚みは加熱時間や安全な火入れを保証する数値ではありません。
整形・筋引き・小割方法
らん表面の背側、すじ、脂肪を除去します。

仙尾椎(シッポの部分)のすじを除去します。

「らんかぶり」を除去します。

らんから「ネクタイ」を分割します。

そとももの切断面から、「らん」と「いちぼ」に分割します。

左側から「かぶり(A)」、「ネクタイ(B)」、「らん(C)」、「いちぼ(D)」

らんの脂肪は5ミリ程度の厚さに整形する。
ただし、脂肪の質や商品づくりの違いによりすべて除去する場合があります。
脂肪の質のよいものは、脂肪を付けて「すき焼き用」にスライス、脂肪を3ミリ程度付けて「ステーキ用」や「しゃぶしゃぶ用」に商品にできます。

そともも切断面からの太すじに沿って、「らん」と「らんぼそ」に分割します。

分割線がわからない場合は、部位を裏返してすじの位置や筋繊維の流れの違いをよく見て切断するとよいです。
左側が「らん(A)」、右側が「らんぼそ(B)」。

「らん」の「そともも」よりの太すじを5センチ程度除去します。

「いちぼ」のすじひき・整形・分割
いちぼの脂肪を3ミリ程度に整形します。

そともも側から15センチ程度の脂肪は除去します(ここのすじが硬いので、脂肪を除去後すじをひく)。

表面のすじを除去する。はじめに仙・尾椎側のすじ、次に「いちぼ」表面のすじを除去します。
この場合(A)の部分にすじが入り込んでいるので、すじの上の肉をめくり1.5cm程度中すじを除去します。

「らん」の商品化
一般的に「らん」はその付着している脂肪の質により商品化が違います。脂肪の質のよいものは、5ミリ程度脂肪をつけ、スライスし「すき焼き用」、脂肪を3mmにして「しゃぶしゃぶ用」に商品化します。


らんぷをサーロイン切断面から厚さ2センチ程度にカッティングし、「ランプステーキ」ができます。
また、「らん」を中央から1/2に柵どりをし、「ミニステーキ」もできます。
最後の部分に近づくにつれて、肉質が硬くなるので、最後の部分から7センチ(肉質にもよります)程度になったら「焼肉用」、最後の部分から3センチ程度は「カレー用」にカッティングするなど肉質によってカッティングの厚さを変えて商品化となります。
「らんぼそ」の商品化
サーロイン切断面側から厚さ2センチ程度の厚さで「ステーキ用」をカッティングします。

最後の部分に近づくにつれて、肉質がかたくなるので、最後の部分から7センチ程度になったら「焼肉用」、最後の部分から3センチ程度は「カレー用」にカッティングするとよいです。

「いちぼ」からの商品化
いちぼは、そともも側の肉厚の部分(A)とサーロイン側の肉厚の薄い部分「クーレット(B、本記事内の呼称)」に分割して商品化ができます。

そともも側の肉厚の部分は、肉質が硬いので薄くスライスして「切り落とし」、ダイス状にカッティングして「シチュー用」にもできます。肉質と規格が合えば、焼肉用やしゃぶしゃぶ用などにも使い分けます。見た目の品質がよいことを、生食や加熱不十分でよい理由にはしないでください。


サーロイン側の肉厚の薄い部分「クーレット」は、筋繊維の流れに注意して焼肉用の柵どりにして、厚さ5ミリ程度の「焼肉用」でも商品化できます。
また、ひとくち状のダイスにカッティングし「サイコロ」ステーキとして、またスライスして「しゃぶしゃぶ用」に商品化ができます。
なお、品質のよいものは、「ステーキ用」としても利用できます。


ランプからつくるステーキ(海外編)
表面のすじ、脂肪をトリミング。

メガネを取り外します。

ランジリをカットして、形を整えます。

余分な脂肪を除去します。

脂肪面の汚れを除去し、8ミリアンダーに整形します。

ファミリーステーキ
整形後のランプ。

この写真例では、ランジリと平行に厚さ3cmでフルカットし、2〜3人で分けるステーキとして紹介しています。実際の重量や人数分は、肉の大きさと提供量で確認します。

ファミリーステーキ。

ミニステーキ
ファミリーステーキをとった後、ランプとイチボの境目にナイフを入れます。

すじに沿って分割します。

1=ランプ、2=イチボ。

ランプは繊維と平行に3分割します。

それぞれを厚さ2cmでカッティングするとミニステーキができます。

ミニステーキ。

一本仕入れの原価は、整形後の使い道まで計算する
| 確認すること | 仕入れ・商品化の判断 |
|---|---|
| 脂・すじの残り方 | 一本の価格だけでなく、取り除く作業と使える量を確認する |
| 小割ごとの用途 | ランプ、らんぼそ、イチボなどを、ステーキ・焼肉・薄切り・煮込みへ振り分ける |
| 作業時間と設備 | 筋引き・小割・スライスを行える人員、器具、冷蔵容量を確認する |
| 実質原価 | 仕入代・送料・加工に要する費用を、販売に使える重量で割る。未計測の歩留まりは仮定と分ける |
たとえばステーキ用だけを分母にするのか、切り落としや煮込み用まで販売に使うのかで原価は変わります。切除脂・すじ、販売できる小割、作業時間を記録して、自店の条件で比較してください。
部位の特徴を先に整理したい方はランプとイチボの違い、イチボの用途を確認したい方はイチボの特徴をご覧ください。
まとめ
ランイチを活かすには、一本からどの商品を作り、残りをどう使うかまで決めておくことが大切です。写真の工程は一例として、求める規格と自店の作業負担、整形後の使える量を合わせて仕入れを選びましょう。
業務用の牛肉を仕入れる方へ
当社の掲載商品が原料ブロックの場合、この記事の小割・カットは購入者側で行う技術例です。ランイチの常時在庫や写真と同じ整形、スライス加工の受注を確約するものではありません。
Mマートは業務用の企業・店舗・組織などを対象とする会員制の市場です。一般消費者の個人利用とは異なるため、利用条件を確認してください。当社の掲載商品は原料ブロックの規格を基準に、購入者側での整形・小割・スライスの負担も見込んで選びます。
品種・部位・整形状態、冷蔵/冷凍、不定貫重量、最低ロット、税込/税抜、送料、出荷日と到着予定を商品ページで確認してください。在庫・納期・加工対応は掲載条件によって異なります。
部位規格・衛生管理の参考
あわせて読みたい関連記事




コメント
コメント一覧 (2件)
[…] エムマート(牛肉市場)から見る「ランイチ」部位の活用方法とは? […]
[…] 地域によってはランイチをランプという風に言う方がいます。 […]