前回は、原価意識や歩留りについて記載していきました。
歩留りとは、「原料の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた比率」であり、歩留り率とは、生産性や効率性を高低で優劣を表すものでした。
例えば、枝肉の格付で「A5」の記載がある場合、この「A」とは、歩留り率を表したものです。
要は生産性の格付となりますので、決しておいしさやうまさにつながるものではありません。
生産性の良いものは「A]であり、「C]が悪いとなります。
前回の原価計算についての記事はこちら
- 枝肉を取り扱うえでのフルセットと各部位ごとの原価計算方法。
- 重量比を求め各部位のバランスをみることができる。
- 重量比によって各部位の原価がどのように変化をしているのか。
- 各部位の値入金額を求める方法。
について記載していきます。
これは、部分肉を販売する上で必要なことでもあり、また応用することで部分肉から商品を構成した場合(焼肉やスライスものなど)にも役立ちます。
応用ではありますが部分肉の重量と重量構成比と売価さえわかれば、スーパーなどの量販店や精肉店がどれくらいで仕入れているのかだいたいわかるようになってきます。
原価計算は適正な利益確保のために必要です!
牛肉を取り扱う上でモノを積みあげて商品となるものではなく、モノを削ったり切り取ったりすることで商品となります。
例えば、車のように部品をあわせて商品になるものではなく、骨や余計な脂や血あいなど取り除き切り分けていくことによって商品ができあがります。
ですから、適正な販売原価を知る必要があります。
また、取引上部分肉フルセット(半丸)とパーツ(部分肉)に分けられ、原価計算はセットとパーツの原価計算に大別されます。
部分肉フルセット原価単価の算出方法とは
部分肉フルセットとは、部位平均の原価です。
例えば、豚部分肉のフルセットはうで、かたロース、もも、ばら、ロース、ヒレであり、部位によって算出される重量や価値、つまり販売単価が違うため原価もかわってきます。
フルセット取引の場合、部位を平均した単価で取引をするため、原価も部位の平均を求めればよいということになります。
枝肉を原料として部分肉を製造する際には、骨、脂肪、スジなどの副産物が発生する、つまり枝肉重量は、部分肉重量と副産物重量の合計となります。
部分肉原価計算式
- 部分肉=原料枝肉重量-副産物重量
- 部分肉金額=減量枝肉金額-副産物金額
- 部分肉金額=部分肉重量×部分肉単価
- 部分肉セット原価単価=(枝肉金額-副産物金額)÷部分肉出来高重量
- 部分肉セット原価単価{枝肉単価-(副産物金額÷枝肉重量)}÷部分肉歩留り
副産物を評価しない場合
牛部分肉セット原価単価=枝肉単価÷部分肉歩留
参考に
部分肉歩留まり率(%)=(部分肉重量÷枝肉重量)×100
豚部分肉セット原価単価の算出
豚枝肉単価500/kg、枝肉重量75kgの豚枝肉を仕入、部分肉加工したところ部分肉歩留まりが75%、骨8,25kg、脂肪9kg、小肉0,33kg、リンパ0,55kg算出されたとき、副産物の評価単価を、骨50円/kg、脂肪30円/kg、小肉250円/kg、リンパ5円/kgとしたときの部分肉セット単価を求めると。
A.
枝肉金額:500円/kg×75kg=37500円
部分肉重量:75kg×0.75=56.25kg
副産物金額は
骨:8.25kg×50円/kg=412.5円
脂肪:9kg×30円/kg=270円
小肉:0.33×250円/kg=82.5円
リンパ:0.55円kg×5円/kg=2.75円
合計:767.75円となる。
部分肉金額は
37500円-767.75円=36732.25円
部分肉セット原価単価は
36732.25円÷56.25kg≠653.01円/kg
※豚のほうがわかりやすいため、あえて牛にはしておりません。
部分肉部位別原価計算方法
次に部分肉(パーツ)といった価値の異なる部位に分割、整形されて流通しますので、部位ごとの原価計算方法となります。
部位別重量比と積数比を活用した計算方法
枝肉重量 75kg
枝肉単価 550円
枝肉金額 41250円⑧
- 係数:販売予定単価を使用します。
- 重量比(歩留構成比)を求めることにより、各部位のバランスをみていきます。
- 重量比の変更により原価単価がどのように変化するかなどが計算ができます。
計算方法
枝肉金額の算出:枝肉重量×枝肉単価
重量比の算出:各重量÷枝肉重量
積数の算出:各重量比×係数
積数比の算出:各積数÷積数合計
部位別原価金額の算出:枝肉金額×積数比
部位別原価単価の算出:部位別原価金額÷部位別重量
計算上の注意点
- 重量比、積数比、部位別原価単価の端数処理には注意。
- 積数比は、小数点以下切り捨てとする。
- 部位別原価金額合計は、枝肉金額を同じになるように注意し、部位別原価金額を調整する。目安は重量の一番重たい部位で調整する。
積数比を使った計算方法
枝肉重量 75kg
枝肉単価 550円
枝肉金額 41250円①
係数は販売予定単価を利用しているので、積数は販売予定金額になり積数合計は販売予定金額となり、仕入れ金額を差し引くことにより値入金額を知ることができる。
計算方法
枝肉金額:枝肉重量×枝肉単価
積数の算出:各重量×係数
積数は、端数処理をしないこと
積数比の算出:各積数÷積数合計
部位別原価金額の算出:枝肉金額×積数比
- 部位別原価金額は、小数点以下切り捨てとします。
- 部位別原価金額合計が、枝肉金額と同じになるように調整する。また、最も重量の重たいもので調整します。
- 部位別原価単価:部位別原価金額÷部位別重量
計算上の注意点
- 積数比、部位別原価単価の端数処理に注意する。
- 積数は、小数点以下切り捨てとする。
- 部位別原価金額合計は、枝肉金額を同じようにする。
原価率を使った計算方法
枝肉重量 75kg
枝肉単価 550円
枝肉金額 41250円①
計算方法
枝肉金額の算出:枝肉重量×枝肉単価
積数の算出:各重量×係数
積数は、端数処理しない
原価率の算出:枝肉÷積数合計
係数が販売金額なので、したがって積数の合計は販売金額の合計です。
原価率とは、販売金額に占める原価の割合のこと。
部位別原価金額の算出:原価率×各積数
部位別原価単価の算出:部位別原価金額÷部位別重量
計算上の注意点
- 原価比、部位別原価単価の端数処理に注意する。
- 積数は、小数点以下切り捨てとする。
- 部位別原価金額合計は、枝肉金額と同じようにする。
原価率は、原価の割合
売上高=原価高+値入高(粗利益高)(1=原価率+値入率)
1-原価率=値入率(粗利益率)
粗利益率を向上させるには原価率を低く抑えることが必要であり、そのためには仕入れ単価の低減、歩留りの向上、販売単価の見直し、販売ロスの改善などがあげられます。
この計算方法は、計算が簡略であるが、原価率が割り切れない場合が多く、小数点以下を大きく取らないと誤差が大きくなります。
まとめ
代表的な計算式を紹介していきましたが、これを部分肉から焼肉やスライスものなどつかって計算もできるようになります。
例えば、各計算の表にあるように各部位を商品名にし、重量や値段の記載し計算していきますと、原価計算ができます。
これらをエクセルにまとめ自動計算させておくと素早く原価計算ができ便利です。
また、歩留りだけでも作業従事者に意識させておくことで技術の改善にもつながりますので、是非とも参考にしていただきたいと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 枝肉を取り扱う上で必要な【部分肉】の原価計算方法とは?https://gyuniku-igarashi.co.jp/gyunikuhakase/2451/前回は、原価意識や歩留りについて記載していきました。 歩留りとは、「原料の投入量から期待される生産量に対して、… […]
[…] 枝肉を取り扱う上で必要な【部分肉】の原価計算方法とは?https://gyuniku-igarashi.co.jp/gyunikuhakase/2451/前回は、原価意識や歩留りについて記載していきました。 歩留りとは、「原料の投入量から期待される生産量に対して、… […]