牛肉の生食は危険?生食用牛肉の規格基準と食中毒予防を解説

「牛肉は生で食べてはいけないのでしょうか?」

牛肉の生食については、食中毒事故をきっかけに衛生管理や規制が強化されてきました。

ただし、牛肉すべての生食が法律で一律に禁止されているわけではありません。

牛の食肉(内臓を除く)を生食用として販売・提供する場合には、食品衛生法に基づく「生食用食肉(牛肉)の規格基準」を満たす必要があります。一方、牛レバーについては、生食用として販売・提供することが禁止されています。

また、規格基準の有無とは別に、食肉を生または加熱不十分な状態で食べることには食中毒のリスクがあります。

この記事では、牛肉の生食にどのようなリスクがあるのか、生食用牛肉にはどのような基準があるのか、そして家庭で牛肉を安全に扱うために必要な衛生管理と加熱について解説します。

この記事を読むとわかること

  • 牛肉を生・加熱不十分で食べるリスク
  • 生食用牛肉に定められている規格基準
  • 牛レバーの生食が禁止されている理由
  • 食中毒予防の基本
  • 生肉を扱うときの衛生管理
  • 牛肉を十分に加熱するための考え方

についてご紹介していきます。

目次

牛肉を生・加熱不十分で食べると、なぜリスクがある?

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牛の屠畜段階においては、牛などの動物の腸管には、腸管出血性大腸菌などの病原微生物が存在することがあります。

と畜・解体・加工・流通・調理の各工程では衛生管理が行われていますが、食肉への微生物の付着を完全にゼロにすることはできません。

そのため、見た目が新鮮であることや、においに異常がないことだけでは、生食して安全かどうかを判断することはできません。

家庭で一般的な牛肉を調理する場合は、生食や加熱不足を避け、中心部まで十分に加熱することが基本です。

ですが、何故私たちの生活の中で絶え間なく食中毒事件など起こるのでしょうか?

そこには原因を知り、予防することがもっとも大切です。

私たちが牛肉を食する上で、様々な工程が行われています。

屠畜段階においては、無菌状態であっても時間の経過、酸素や人などに触れる事により菌は付着し、増殖していきます。

また、世の中の菌の種類だけでも5000種を超えるともいわれています。

そのような中で安全かつ安心して食することがもっとも大切となってきました。

その安全策の代表的なものは、調理や食事をする前にきちんと手を洗い、牛肉をきちんと加熱することがポイントです。

今回は食中毒の原因を知り、予防をしていく方法についても記載していきます。

基本的な予防法になります!

食中毒予防の基本は「つけない・増やさない・やっつける」

 食中毒を予防する基本は、

菌をつけない
菌を増やさない
菌をやっつける

の3つです。

生肉を扱った手や包丁・まな板・トングなどから、そのまま食べる食品や加熱後の食品へ汚染を広げないことが重要です。

また、購入した肉は長時間室温へ放置せず、表示された保存方法に従って冷蔵・冷凍します。

調理時には、表面だけでなく中心部まで十分に加熱してください。

食中毒とは?

飲食物に食中毒を起こす細菌やウィルスが付着したり、増殖をしたり、有害・有毒な化学物質等を含んだり、容器包装を通して有害・有毒な物質が混入した食品を食べることで健康に害を及ぼすことを言います。

主な症状は、下痢や嘔吐や発熱などです。

私たちのまわりは、ほとんど細菌の棲家(すみか)となっています。

食品に付着したばい菌は肉眼では見えません。

食中毒の原因菌が発病菌量まで増殖しても、味、臭い、色にほとんど変化がないために、私たちの五感ではその危険性は見分けることはできません。

細菌による食中毒を予防するには三大原則を守ることです。

清潔感を保つことが重要(菌をつけない)

調理器具は十分洗浄し、清潔に取り扱いするには、一般的に魚介類・肉類用の調理器具と、野菜など用の器具を分けることが効果的です。

とくにまな板は一般家庭の調理においても複数準備することは困難の場合、まな板の両面を使い分けるだけでも効果的です。

野菜などの食材の加工を先に行い、肉類は最後に切るように心がけるのも予防につながります。

菌の増殖を防ぐ(迅速・冷却・乾燥)

食材を冷蔵・冷凍することは、原因菌の増殖を抑えるのに効果的です。

しかし、いずれも菌が不活化(死滅)するわけではないことに十分に注意しなければなりません。

加工済みの食品と肉、魚、野菜の保管場所を一緒にしてはいけません。

お互い汚染の原因になることもあります。

また、冷蔵庫では食品を詰め込みすぎず、冷気が適切に循環するようにします。

生肉は、肉汁が他の食品へ付着しないよう容器や袋に入れ、そのまま食べる食品とは分けて保管してください。

食材を完全に乾燥させることはできないので調理器具を洗浄した後、速やかに水分を拭き取り、風通し良いところで吊るすなど工夫し乾かすようにします。

中心部まで十分に加熱する

一般的な食肉の加熱では、中心温度75℃で1分以上、またはこれと同等以上の加熱条件が目安です。

厚生労働省は同等の条件として、

70℃3分、69℃4分、68℃5分、67℃8分、66℃11分、65℃15分

を示しています。

肉の厚さや重量、形、加熱開始時の温度などによって必要な時間は変わるため、厚みのある肉では中心温度計を使用して確認してください。

食中毒の種類と発生とは

食中毒に代表されるものを大別すると細菌性食中毒・ウィルス食中毒・感染症による食中毒・自然毒食中毒・化学性食中毒に分けられます。

ウィルス食中毒はノロウイルス、感染症食中毒には、チフス菌、赤痢菌、コレラ菌、腸管内出血性大腸菌O-157があげられ、人の糞便や汚染された水、食べ物が経路となり人が病原巣となります(O-157は別)。

自然毒食中毒は、動物性と植物性に分けられ動物性においては、フグや毒貝。

植物性においては、毒キノコ・トリカブト・朝鮮アサガオ・ジャガイモの芽になります。

化学性食中毒には、殺虫剤・農薬・ヒ素・水銀などになります。

※細菌とウィルスの違いとは?

牛肉で特に注意したい食中毒

牛肉では、腸管出血性大腸菌などによる食中毒に注意が必要です。

病原微生物は肉眼で確認できず、食品の色・味・においに明らかな変化がなくても存在する場合があります。

そのため、「新鮮だから大丈夫」「見た目に問題がないから大丈夫」と判断せず、適切な保存、交差汚染の防止、十分な加熱を組み合わせることが重要です。

牛肉の生で知っておきたい対処法とは

牛肉は屠畜段階までの筋肉組織においては菌がいません。

ですが、大元にはいないにもかかわらず菌がついているのは外的要因があるからです。

人が持っているもの、設備などにもともと付着しているものが肉に付き、菌が増殖しています。

菌が増殖する要因とは、酸素、水分、養分、PH値のいずれかによって増殖し、増殖が一定数を超えると人体影響を及ぼします。

しかし、人体に影響する菌といっても一部の菌によってになります。

前述にも合った通りに、菌を付けない、増やさない、殺すということが大切になります。

ただし、これらがあったとしても現実的に菌を完全に0にすることは難しいものです。

なぜなら、人が触れるものですし、酸素もあります。

例えば、冷蔵庫で保管をしていても低い温度で活性する菌もいることから増殖の要因がわかっていても難しいのです。

では、どのようにしたら対策をしたらよいのか、ご紹介していきます。

牛肉などの生肉を扱う前に注意すること

生肉を扱う前後には、石けんを使って十分に手を洗います。

包丁、まな板、トングなどの調理器具は、使用後に十分に洗浄し、器具や製品に適した方法で消毒してください。

生肉に使用した器具を、洗浄・消毒せずに加熱後の肉や野菜などへ使用しないようにします。

消毒剤を使用する場合は、製品に表示されている用途・使用方法・濃度などに従って使用してください。

アルコールの使い方は、水分がない状況で使いましょう。

水分があればアルコールが薄まっていきますので本来の効果が発揮できません。

水分をきちんとふき取るか乾燥させることが大切です!

また、ステンレスの材質に付着したものは固着して白い斑点模様ができてしまいますので必ずふき取ることをおすすめします。

しかし、アルコールは完璧に菌をおさえることはできないため、用具においては「次亜塩素酸ナトリウム」を使った消毒も定期的に行うとよいでしょう。

例えばハイターがよく使われます。

次亜塩素酸ナトリウムは扱い方に危険性が伴うため、用法、用量を適切に使うことが大切です。

小さな子供や赤ちゃんがいるご家庭では、専用品が販売されているので使うとよいです。

昔からよく使われている対策としては、煮沸消毒があります。

水を煮沸させます。使用したタオルなどに行うとよいですが、きちんと脱水し、乾燥させることが大切です。

牛肉のステーキなど食べるときに使う予防とは

現在では牛肉を焼く前にトリミングをすれば付着した菌は取り除かれて安心だという方がいますが、これは大きな勘違いになります。

前述にも記載しましたが菌が付着する要因は人やモノになりますので、いくら取り払ったとしても扱う人やモノ(包丁などの器具)に菌がいないことはありえません。

表面を切り取るだけでは安全性を判断できない

牛肉の表面を切り取ったり、見た目の悪い部分を取り除いたりしただけで、食品安全が確保されたと判断することはできません。

家庭では、生食用として適切に管理された商品以外を生で食べることは避け、一般的な牛肉は中心部まで十分に加熱してください。

ですから、適切な予防と対策を行うことで食中毒になる可能性を減らすためには食べる際にも予防が必要です。

加熱条件は温度と時間の両方で確認する

低い温度で長時間加熱する調理方法もありますが、単に「低温調理をした」というだけでは安全性を判断できません。

食肉の加熱では、肉の中心部が必要な温度に達し、その温度が必要な時間維持されていることを確認する必要があります。

家庭で調理する際は、調理器具の設定温度だけではなく、中心温度計を使って肉そのものの中心温度を確認してください。

これらの道具はステーキなどの焼く前提ですので、調理によっては難しい場合があります。

生の牛肉はスパイスなど必ず使うとよい!

お寿司にはわさびを使うって食べる人はかなり多いかと思います。

苦手な方もおられるかもしれませんが、わさびは抗菌作用もかねているからです。無理な人は「ガリ」を食べましょう。

もちろん牛肉にも抗菌作用のあるスパイスがあります。

強い抗菌性があるのはガーリック、クローブ、シナモン、マスタードになります。また、酵母についてはクローブ、シナモン、オールスパイスが効果があるとされています。

抗菌成分としては、オイゲノール、チモール、イソボルネオール、バニリン、サルチルアルデヒド、アリシン、イソチオシアネートがあります。

ちょっと豆知識!

牛肉の劣化を抑える抗酸化作用のある香辛料は、クローブ、タイム、ネギ属、しょうが、こしょう、トウガラシになります。

香辛料や調味料を使用しても、十分な加熱や衛生管理の代わりにはなりません。

食中毒予防では、手洗い、適切な保存、交差汚染の防止、十分な加熱を基本としてください。

生・加熱不十分な牛肉を食べた後に体調が悪くなったら


生または加熱不十分な肉を食べた後に、腹痛、下痢、嘔吐、発熱、血便などの症状が現れた場合は、自己判断で済ませず医療機関へ相談してください。

食中毒は原因となる微生物によって、症状や発症までの時間が異なります。

とくに乳幼児、高齢者、妊娠中の方、基礎疾患などにより抵抗力が低下している方では重症化する場合があるため注意が必要です。

医薬品については自己判断で使用せず、医師・薬剤師など専門家の指示に従ってください。

生食用牛肉には規格基準が定められている

牛肉すべての生食が法律で禁止されているわけではありません。

牛の食肉(内臓を除く)を生食用として販売・提供する場合には、食品衛生法に基づく規格基準が定められています。

生食用牛肉には、微生物に関する成分規格のほか、専用設備・器具、加工方法、加熱殺菌、保存方法などについて基準があります。

この基準の対象には、ユッケ、牛刺し、牛タタキなど、生食用として販売・提供される牛肉が含まれます。

一方、一般的な加熱用牛肉を家庭で自己判断により生食用として扱うことは避けてください。

牛レバーは生食用として販売・提供できない

牛レバーについては、内部からも腸管出血性大腸菌が検出されたことなどから、2012年7月以降、生食用として販売・提供することが禁止されています。

「新鮮だから大丈夫」と判断することはできません。

牛レバーを食べる場合は、中心部まで十分に加熱してください。

HACCPなどの認定が安全を担保している

食品事業者には、HACCPに沿った衛生管理などを通じて、原材料の受入れから製造・加工・保管まで衛生上のリスクを管理することが求められています。

ただし、HACCPに沿った衛生管理を行っていることだけで、個々の食品の安全性が自動的に保証されるわけではありません。

事業者による衛生管理と、消費者側での適切な保存・調理の両方が重要です。

まとめ

牛肉を生または加熱不十分な状態で食べることには、食中毒のリスクがあります。

一方で、牛肉すべての生食が一律に禁止されているわけではなく、牛の食肉(内臓を除く)については、生食用として販売・提供するための規格基準が定められています。

ただし、一般的な加熱用牛肉を「新鮮だから」「表面を焼いたから」といった理由だけで生食することは避けてください。

また、牛レバーは生食用として販売・提供することが禁止されており、中心部まで十分に加熱する必要があります。

家庭で牛肉を扱う際に重要なのは、**「つけない・増やさない・やっつける」**という食中毒予防の基本です。

生肉を扱った後は手や調理器具を十分に洗浄し、他の食品への二次汚染を防ぎ、肉は適切に保存してください。

加熱する際は焼き時間や肉の色だけに頼らず、必要に応じて中心温度を確認しながら十分に加熱しましょう。

牛肉を安全に楽しむためには、「新鮮そうだから大丈夫」と感覚だけで判断せず、商品の表示、保存方法、衛生管理、加熱条件を正しく確認することが大切です。

手洗いと加熱が最も大切です!
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この記事を書いた人

食肉販売技術管理士。 食肉のプロを養成する学校で「技能賞」を受賞後卒業。関東、関西中心に全国各地で食肉の技術と知識を学ぶ。 国産牛卸の(株)五十嵐商会にて、品質管理室室長を務め、牛の捌きを10年で5万頭の経験。現在は五十嵐商会(株)代表取締役。

近年では、NHK「あさイチ」に出演。「関西じゃらん」の特別付録にて牛肉の寄稿・監修も。

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