業務用の仕入れとは非常に難しいものがあります。
私も牛の仕入れに生体と枝肉を購入するときはよくありますが、いまだかつて納得いく買い物ができたことはありません。
それはなぜかというと、生き物だからです。
人間にも同じように言えますが、同じ品種でも個々に違いや個性があるからです。
ただ、人間とは違うのですが、牛の価格には基準があり、決定している基準も同じなのです。
今回は、「市場」を中心にどのようにしたら良い購入につながるのか基本的なことからご紹介していきます。
食肉には抑えておくべき市場の流れがあります
業務用卸売のエムマート(畜産市場)において参考にしておくべき知識があります。
牛肉とは、生き物を扱うことになります。また、世の中の事象とともに牛肉の取引や生産におけるものが大きく変化してきました。
例えば、牛の生産戸数の減少で牛肉の市場価格が高騰やブランド牛が種類が増加、輸入の緩和で海外からの牛肉が数多くはいってきて、日本の牛をかけ合わせの「WAGYU」という牛があったりと、世の中の変化により価格帯や売れ筋に大きな影響を及ぼしている事は、過言ではありません。
過去から今と食肉市場を見ていくとどのような変化があり、生体を知ることで、乱立する情報を的確に判断していくのか見定める上での一つの参考になればと思います。
食肉の形態変化
きゅうり、キャベツ等の野菜、さんま、いわし等の魚介類、花などは、生産者(漁業者)から消費者まで、その形態がほとんど変わらずに届きます。
しかしながら、食肉は、生産者段階では生体であるものが、と畜場において枝肉(骨がついた状態のもの)に、その後、部分肉と流通段階ごとにその形態が変わり、消費者には精肉として届きます。
セリ等により価格形成機能を有する食肉卸売市場においては、枝肉により取引が行われ、流通価格のもとになります。
その後、骨やすじを取り除くことにより、食用に向く部分は小さくなり、その歩留まりに加え、加工賃や資材費が加わることにより、重量単位あたりの価格が高くなります。
例えば、車の製造においては、数多くの部品の積み重ねで商品としての価値が生まれますが、食肉の場合は、流通段階において骨、すじを除去し、小割をしていくことにより商品としての価値が大きくなっていきます。
このように加工により形態が変化し、さらに部位ごとに流通することが多く、ヒレやロースのように単価の高い部位と、もも肉や肩肉等のように単価の安い部位もあり、価格の形成は複雑になっています。
食肉消費動向
牛肉の輸入は、平成2年度まで輸入割当品目として、国内需要のうち不足する分を輸入する仕組みがとられてきました。
増加する牛肉需要に対して、国内生産の伸びは小さく、輸入割当を増加することにより、国内の牛肉消費の対応が行われてきました。また、対米ドルの為替レートが、昭和の推移もあり、牛肉輸入割当の撤廃後、さらに輸入牛肉の増加により、国内需要が満たされきました。
平成13年のBSE確認後、牛肉の消費は、豚肉や鶏肉へ移行したこともあり大幅に減少し、その後徐々に回復基調にありましたが、平成23年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所による放射能汚染問題もあり、牛肉消費は伸びが停滞しています。
食肉の消費構造
食肉の消費は、昭和50年代まで各家庭が生鮮肉を購入し、調理することにより消費する量が、全体の消費量の半分以上を占めていましたが、その後、牛肉や鶏肉は、ハンバーガー、焼肉、フライドチキン等の外食における消費が増え、各家庭で購入する割合は3割台になっています。
豚肉は、価格や調理が手頃といった面もあり、各家庭で生鮮肉を購入して消費する割合が、他の食肉に比べて高く、5割弱程度になっていますが、豚肉がハム・ソーセージ等に加工され、消費される割合は、牛肉、鶏肉の加工仕向けが、10%以内であることに比べ高く、全体の4分の1程度となっています。
他の動物性食品との関係をみると、食肉摂取量は、魚介類の摂取量の減少と置き換えるように増加し、平成21年以降は、魚介類を上回って、摂取されています。尚、年齢別摂取量をみると、若い世代は、魚介類より食肉を多く摂取しますが、60歳以上では、以前と、食肉より魚介類の摂取量が多い状況にあります。
牛の種類
日本国内で販売されている牛肉には国産牛肉と輸入牛肉があります。
国産牛肉には和牛肉とそれ以外とがあります。牛の種類(品種)でいうと、和牛肉は日本原産の4品種が生産した牛肉であり、国産牛肉のうち和牛肉以外のものは、ホルスタイン種と交雑種(主に和牛とホルスのかけ合わせ)の生産した牛肉です。
また輸入牛肉は、主に欧州を原産国とする品種による牛肉で、これらの品種は「外国種」とも呼んでいます。
肉用牛について
肉用牛の生産
繁殖用の肉用牛は、年一回くらいの割合で子牛を産み、妊娠期間は約280日です。乳用牛の場合、生まれてすぐ子牛を母牛を離しますが、肉用牛では、子牛を産んだ母牛がしばらくの間子牛に乳を与え、6ヶ月くらいになるまで母牛と一緒に飼われていることが多いようです。
また、このころになると、母牛は次の子牛を産むための交配が行われます。
米国などでは交配用の雄牛を飼育している農家もありますが、日本ではほとんど人口受精によって交配しています。
前の子牛を産んでから早い牛で11ヶ月くらい、遅い牛でも14ヶ月くらいで次の子牛を産みます。このようにして繁殖用の雌牛は子牛を毎年1頭ずつ産んでいき、生涯産子数はだいたい7~10頭です。
雌牛が子牛を産めるようになるには、生まれてから約15ヶ月の飼養期間が必要です。さらに妊娠期間は280日と長いため、約24ヶ月月齢くらいになってようやく初めての子牛が産まれることになります。
豚や鷄などに比べ繁殖効率が極めて悪いのですが、1頭あたりからとれる肉の量が豚や鷄よりもずっと多く、また1頭当たりの単価も高くなります。そのため、できるだけ短期間に交配、妊娠、出産を繰り返すことが農家にとって重要な課題です。
肉専用種肥育牛のライフサイクル
生まれた子牛は5~7ヶ月間、母牛に育てられますが、後半の2~3ヶ月間は草や配合飼料、穀物なども与えられます。また、雄牛は生後2~3ヶ月齢に去勢します。これは、肉質を良くし、太りやすくし、性質をおとなしくして飼いやすくするために行います。
こうして大きくなった子牛は、5~7ヶ月齢時に離乳し、雌牛は育成後、一部は肥育に仕向けますが、主に繁殖に用いられ、雄牛(去勢牛)は肥育に仕向けられます。
肥育仕向けとなった去勢牛は、約20ヶ月かけて成牛に肥育されます。この間、餌は稲わらなどとともに、大麦やトウモロコシなどのカロリーの高い穀物が与えられ、よい肉質の牛に育てられます。
乳用種肥育牛のライフサイクル
乳用種の場合、その飼養目的が牛乳を生産することにあるため、雄牛は優秀な種雄牛になるもの以外は食肉用として肥育に向けられます。
あくまでも乳用牛は乳を搾ることが目的なので、生まれた子牛は、間もなく母牛から離され、初乳(色々な免疫物質を含んだ分娩直後の母乳)を含め、脱脂粉乳などを原料とする人工乳、乾草、配合飼料などが人工的に与えられます。
こうして人工哺育により育成された子牛は、7ヶ月齢で肥育に仕向けられ、約15ヶ月かけて成牛に肥育されます。この間、与えられる餌は肉専用種の場合とほぼ同様です。
まとめ
過去さかのぼってみますと、食生活の変化によって牛肉の消費の仕方が変わっていくことや牛にも様々な品種があり、目的によって飼育が違うことがわかります。
また、牛は寒いところは強いですが、暑いところでは非常に苦手です。このことから、夏場の手前から段々と出荷頭数が減少し、それが価格帯にも影響しています。秋口からまた増加傾向になり、価格が安定もしくは、減少傾向にもなります。
近年は、牛肉の高騰によってこれまで扱ってきた和牛や交雑が購入しづらくなり、ホルスタインを使用する所も増えてきました。様々なことが絡み合い消費する側から非常にきびしいものになりました。
ただ、これらの一部分の知識を知っているだけでも、どのような思索を重ねていけばよいのかわかってくるようになりますので、是非とも参考にして頂ければと思います。
https://gyuniku-igarashi.co.jp/gyunikuhakase/2520/
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