今回は、サーロインの整形・すじ引きについて解説してきます。
すじ引きには硬いすじと柔らかめのすじがありますが、一番やっかいなのが硬いすじになります。これをきちんと取らないと、肉が硬いなどの不具合があります。
非常に重要な作業になりますので、抑えておくと良いでしょう。
サーロインの背側の筋を引いたものですが、使い方は肉質を見極める事が必要です
エムマート市場(畜産市場)において、サーロインの筋引き(背筋引き)が多く見受けられます。
この背筋引きとはどのように筋引き・整形されているのか、又、どのような活用方法があるのかなど記載していきます。
サーロインとは、「リブロース」と「らんいち」に挟まれた部位で、肩ロースにから始まる胸最長筋の末端部分です。
ロイン3点(リブロイン、サーロイン、テンダーロイン)のうち、サーの称号を冠する最高の肉質を持つ部位です。
代表的なステーキ部位で、通常、サーロインステーキ名です。レストンなどでこのステーキを注文しますと、ウエイターに「焼き加減は?」を尋ねられます。
焼き加減を注文できるステーキは、どんな焼き加減にも対応できる優れた肉質の部位である証拠でしょう。
焼き方は、おおよそ次のような呼び方でその程度を表します。
ベリーレア(ほとんど生焼け)
- レア(生焼け)
- ミディアムレア(中位よりやや生焼け)
- ミディアム(中位の焼き加減)
- ウェルダン(よく焼けたもの)
さて、今回は、このサーロインの整形とすじ引きの抑えておくべきポイントと方法について記載していきますが、本当に注意すべき点は、肉質を見極めることにあります。
何故かというと、肉質によってはステーキにはできないもの(サーロインでも)があります。
例えば肉が締まっていないもの、品種によってもです。価格が安いからといって安易を手をださず、販売店とその肉質について相談することが大切です。
品種や肉質によっては、用途が変わる事がありますので注意が必要です。
サーロインの活用において留意すべき点
サーロインにおいては、「ステーキにしか使えない」という判断や煮込めば柔らかくなるというのは間違いであり畜種や重量(1部位の)、肉質において用途や商品名などの改訂が必要です。
畜種や重量
和牛や交雑種においてのサーロインについては、牛の体格や重量においてステーキに向いていますが、ホルスタインや経産(子供を産むための牛)においては、通常のサーロインとは重量があってもなくてもサーロインの厚さに違いがでます。
これは、妊娠時に子供によって体がおされてたり、もともとの体格が胴長であるためサーロインが薄いものになってしまいます。
2つのサーロインを見比べますと明らかに部位自体の厚さの違いがあり、見栄えが違う事が伺えます。
また、ホルスの場合だと厚さ(見栄え)も求める場合は、5kg以上のものがないと通常のステーキとして扱えないに思えますが、3kg以内でしたらロールステーキやミニステーキ、串物やサイコロステーキとして名称を変えて販売も可能です。
肉質の違いで工夫が必要
サーロインの肉質はどのような品種だとしても「肉のきめ」自体に変わりはありません。
ただ、焼くという作業においては問題ありませんが、「煮込む」という作業をしたときに肉が締まっていきますので注意が必要です。
きめとは、繊維の間隔をあらわしていますが、締まるというのはこの間隔のがせまくなったりなどの事をいいます。煮込めばこの間隔が狭まり硬く感じるようになります。この場合は、筋繊維やすじを切る必要があります。
ホルスタインのように「硬い」というイメージが強いものは、この筋繊維をほぐすや切るという作業をすれば柔らかく感じます。
柔らかくする方法においては、植物酵素や酒類(ワインなど)、もしくは、繊維を切る作業で柔らかくすることができます。
https://gyuniku-igarashi.co.jp/gyunikuhakase/1275/
また、仕入れ先に屠畜日を聞いてみるなどをして最低5日以上の熟成がなされているか確認してみるのもよいのではないでしょうか。
サーロインのすじ引きとポイント
サーロイン部位は、ほとんどステーキとして用いるから、骨肌と小骨は完全に取り除く必要があります。
また、サーロインのバラ足は、長すぎず、ロースの肉までばら足に切ることのないように注意が必要です。
サーロインは、肉質や味、形、大きさ、脂肪の付き方などからみてステーキが最適です。
この部位は、一頭からわずかに11㌔ほどしか得られないから価値ある部位になります。
しかし、そのうちのらんじり側は、価値が劣ります。ただし、前述にあった品種、肉質によってはステーキに難しいものがありますので、ミニステーキやサイコロステーキ、ロールステーキなどに変化をつけた方がよいです。
ばら足を切り離す
ばら足の長いものは、ロース芯より2センチのところでばら足を切り離します。(図参照)
※ばら足とは、ロース部位についてるバラの部分のことです。
ロースのみみ部分の骨肌、汚れ、変色を取り除きます
- 最初、みみ部分のロース骨を抜いたあとのくぼみの周りを、右方より左へナイフを入れ骨肌と薄い膜を取り除きます。
- 次に、みみ部分の手前側面の骨肌と乾燥して変色した肉を削り取ります。(図参照)
サーロイン上面のすじと骨肌を取り除きます
脱骨あとの骨と骨肌も一緒に引けるだけ引きます。
サーロイン上面の骨肌と小骨を取り除きます
ロース上面に残っている骨肌と小骨を丁寧に取り除きます。
※この動作では、くぼんだ所は引きづらい。この動作だと、くぼんだ所も引きやすいです。
脱骨あとのくぼみの骨肌と小骨を取り除きます
脱骨あとのくぼみの骨肌と小骨は特に丁寧に取り除きます(図参照)
※この部分の取り残しが特に多くみられますが、必ず完全に取り除きます。
外側脂肪、背筋上面脂肪を取り除きます
- 脂肪を平均5ミリ位残して、余分な脂肪は削り取ります。(このときナイフを大きく使うと綺麗に仕上がります)
- 背筋上面脂肪にキズを入れ(図のようにすじまで入れます)手前の背筋上面の脂肪を取り除きます。
※背筋へのキズの入れ込みには肉を切らないよう注意が必要です。
背筋を引きます
- 最初に背筋、みみ側面のすじを引きます。
- 次に、上面のすじを引きます。このとき、すじはだがつくように丁寧にひきます。
※すじを引くのは、脂肪をはがした幅だけとします。深く追って取り除くことはありません。
らんじりとの切断面の骨肌と軟骨を取り除きます
- 骨肌をていねいに取り除きます。
- 軟骨が細長くついている。これは、えぐるように丁寧に取り除きます。
※脱骨作業の仕方により軟骨の残っていないものもあります。
サーロイン商品の見本
サーロイン、らんじり側のミニステーキ(2分割してあります)
※らんじり側は肉質が硬くなり、すじもあります。真ん中とらんじり側と同じ商品づくりは避けた方がよいです。分割してらんじり側は、このようにミニステーキや焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きにするほうが良いです。
サーロインステーキ
サシの入りもよく、肉に弾力性があり、水分も少なく肉質のよいロースです。理想的な整形品です。
※サーロインは薄いものより、肉の味が堪能できる肉厚がよいです。
サーロインのしゃぶしゃぶ
切り方、並べ方ともふんわりと上手に切っています。盛り付けが良いと見栄えが良くなります。
サーロインのばら足
骨肌を取り除き、周りの脂肪を適度に整形して、赤身肉とあわせてこま切れ用にします。ばら足は、脂肪に味があるのでグリムキ(脂肪を全て取り除くことはしないほうがよいです。)
まとめ
サーロインといえど肉質や品種によってステーキにはできないものがありますが、これは生産した方が悪いのではなく、本来の肉の取り扱いとは肉そのものを生かす事にあります。
牛肉料理においては、海外の方が数多く存在しますが、この視点の違いからだと思います。
牛といえど生き物ですから、必ずしも品質が安定するとは限りませんし、個体差もあります。
それを品質が悪いから使えないなどの放棄することはあまり望ましいとは言えないと言えます。私に指導してくれた方は、非常に知識や技術が優れている方ばかりでしたが、皆一同にこのように生かす事をどのようにすればよいのか常に考えられておられました。
「その肉を使ってどのようにしたら人に喜んでもらえるのか」大切な事なんだと思います。
コメント
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[…] ホルスタインサーロインを使用するうえで留意すべき点は、和牛と比べ飼養方法や品種の違いから肉色、肉質、艶が違い、品種の違いから体格が違うため、和牛のサーロインと比べ盤面が薄くなる傾向があります。これらによって部位の調理用途も異なることがあり、硬さや味に関しては、熟成などの工夫が必要です。 エムマート(畜産市場)|背筋引きのサーロインの活用方法とは?https://gyuniku-igarashi.co.jp/gyunikuhakase/1714/今回は、サーロインの整形・すじ引きについて解説してきます。 すじ引きには硬いすじと柔らかめのすじがありますが、… […]