牛もも肉の業務用レシピ4選|赤身を活かす調理法・歩留り・原価管理

牛もも肉を仕入れたものの、次のように悩んでいないでしょうか。

  • 加熱すると硬くなる
  • メニューが単調になる
  • ローストビーフ以外の用途が分からない
  • 整形後の歩留りが安定しない
  • 端材を使い切れない
  • 実際の原価が計算しにくい

牛もも肉は、使いにくい部位ではありません。

部位の特徴に合わせて、切り方と調理法を変えることが重要です。

うちもも、しんたま、そとももでは、形や肉質が異なります。

すべてを同じ方法で調理すると、硬さやパサつきが出やすくなります。

一方で、用途を正しく設計すれば、ローストビーフだけでなく、マリネ、サラダ、煮込み、弁当、惣菜などに活用できます。

この記事では、牛もも肉を使った4種類のレシピと、業務用で仕入れる際の歩留り・原価管理について解説します。

目次

牛もも肉は部位と調理法を選べば幅広く活用できる

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牛もも肉は、牛の後肢周辺にある複数の部位の総称です。

主に、次のような部位があります。

  • うちもも
  • しんたま
  • そともも
  • ランイチ

同じ「もも肉」でも、形、肉質、筋の量は異なります。

そのため、商品名だけで判断してはいけません。

料理や製品に合わせて部位を選ぶことが大切です。

例えば、形を整えやすいうちももは、ローストビーフや赤身スライスに向いています。

しんたまは、小割りによって焼肉、ステーキ、スライス、煮込みなどに使い分けられます。

そとももは、筋や肉質を確認しながら、薄切りや煮込み、加工原料に活用できます。

牛もも肉の選び方については、以下の記事も参考にしてください。

牛もも肉の特徴と業務用で使うメリット

脂肪が少なく赤身を訴求しやすい

牛もも肉は、ロース系部位と比べて赤身が中心です。

赤身肉を使ったメニューや、脂肪を抑えた商品を作りたい場合に活用しやすい部位です。

ただし、「もも肉が牛肉の中で最も栄養価が高い」とは一律に言えません。

栄養成分は、牛の品種、部位、脂身の有無によって変わります。

一例として、輸入牛もも赤肉・生100gには、たんぱく質21.2g、脂質4.3g、水分74.2gが含まれます。 根拠のない健康効果を訴求するのではなく、次のように表現するのが適切です。

  • 赤身の味わいを楽しめる
  • 脂身が少ない
  • 肉の食感を感じられる
  • 野菜や酸味のあるソースと合わせやすい

加熱しすぎると硬くなりやすい

牛もも肉は、牛の体を支える運動量の多い部位です。

筋肉質で肉の繊維がしっかりしています。

そのため、厚切りにして長時間加熱すると、硬さを感じやすくなります。

硬さを抑えるには、次の3点が重要です。

  1. 筋繊維に対して直角に切る
  2. 用途に合わせて厚さを変える
  3. 必要な中心加熱を確保し、過度な乾燥を防ぐ

煮込み料理の場合は、反対に時間をかけて加熱します。

短時間で焼く料理と煮込み料理を分けて考えることが重要です。

牛もも肉を硬くしにくくする3つのポイント

1.筋繊維に対して直角に切る

牛肉は、筋繊維と同じ方向に切ると、口の中に長い繊維が残ります。

筋繊維に対して直角に切ることで、繊維を短くできます。

特に、焼肉、サラダ、マリネ、弁当用スライスでは重要です。

2.料理に合わせて厚さを変える

牛もも肉は、厚ければ豪華に見えるとは限りません。

肉質に合わせて厚さを調整します。

目安は次のとおりです。

  • サラダ・冷製メニュー:2~3mm
  • 焼きしゃぶ・マリネ:2~4mm
  • 焼肉・炒め物:4~6mm
  • 煮込み:20~30mm角
  • ローストビーフ:肉質と形に合わせて柵取り

実際の厚さは、肉質や加熱設備に合わせて調整してください。

3.短時間加熱と長時間加熱を使い分ける

食感は筋・繊維・厚み・温度と時間によって変わります。硬さだけで加熱不足や安全性を判定しないでください。

薄切りも中心まで十分に加熱し、そのうえで長時間の過加熱による乾燥を防ぎます。

煮込み用は、肉質を確認しながら時間をかけます。

加熱後に長時間保温する場合は、乾燥にも注意が必要です。

4つのレシピに共通する食品安全

加熱用牛肉は中心まで十分に火を通します。特に筋切り(テンダライズ)・調味液の浸透・結着・牛脂注入などの処理肉やひき肉は、中心75℃で1分間以上、または同等の加熱条件を確認してください。焼き色や肉汁の色、表面の焼き時間だけでは判定せず、温度計で中心温度と保持時間を確かめます。 厚生労働省掲載の衛生管理資料(加工処理肉の加熱)をご確認ください。酢・ライム・漬け込み液は、必要な加熱の代わりにはなりません。

生肉と加熱済み食品で器具・容器を分け、生野菜は洗浄して交差汚染を防ぎます。エスカベッシュやサラダを冷製で出す場合は、加熱済みの肉を衛生的に小分けして速やかに冷却・低温保管し、提供前に和えます。煮込みや煮つけも大鍋のまま室温放置せず、仕込み量・冷却・保管・再加熱を記録してください。

大量調理では厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルも参考に、自店の設備と製造量に合う管理手順を整えます。保存期限はレシピから一律に決めず、原料と製品の条件に応じて設定します。

牛もも肉の業務用レシピ4選

今回紹介する料理は、家庭用だけでなく、飲食店や惣菜の商品開発にも応用できます。

料理向いている用途特徴
エスカベッシュ前菜・バル・ビュッフェ酸味でさっぱり仕上がる
アボカドサラダデリ・カフェ・ランチ赤身と濃厚なソースが合う
豆板醤煮込み中華惣菜・弁当硬めの部分も活用しやすい
甘辛煮和惣菜・弁当・小鉢作り置きや再加熱に対応しやすい

エスカベッシュ

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エスカベッシュとは、加熱した食材を酢や香味野菜に漬け込む料理です。

魚介類に使われることが多い調理法ですが、牛もも肉にも応用できます。

酸味と香味野菜を合わせることで、赤身の味を引き立てます。

材料・2人分

  • 牛もも肉・焼肉用:200g
  • パプリカ:適量
  • みょうが:適量
  • 赤玉ねぎ:適量
  • オクラ:適量

漬け込み液

  • にんにく:1片
  • 生姜:薄切り2枚
  • 赤唐辛子:少量
  • ワインビネガー:大さじ2
  • 醤油:大さじ3
  • 赤ワイン:大さじ3
  • みりん:大さじ2

作り方

  1. 漬け込み液の材料を鍋に入れます。
  2. ひと煮立ちさせ、調味料をなじませます。
  3. 牛もも肉を加熱します。
  4. 中心75℃で1分間以上、または同等の加熱条件を確認します。酢の漬け込みだけで加熱を省略しません。
  5. 加熱した肉を漬け込み液に入れます。
  6. 野菜と合わせ、味をなじませます。

業務用での活用ポイント

1kg仕込みの場合は、基本配合を5倍にして試作できます。

ただし、調味料は単純に倍増すると味が強くなる場合があります。

最初は8割程度から調整してください。

前菜、ビュッフェ、バルメニューに向いています。

端材や形がそろいにくい部分も活用しやすい料理です。

牛肉とアボカドとライムのサラダ

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アボカドの濃厚さとライムの酸味を合わせたサラダです。

脂身の少ない牛もも肉に、アボカドの油分が加わります。

赤身肉を使ったデリやカフェメニューに活用できます。

材料・2人分

  • 牛もも肉・薄切り:100g
  • アボカド:1個
  • ライム:4分の1個
  • マスタード:大さじ1~2
  • サルサヴェルデ:大さじ1
  • 赤唐辛子:少量
  • にんにく:1~2枚
  • 赤玉ねぎ:4分の1個
  • 塩・こしょう:適量

作り方

  1. 牛もも肉に塩、こしょうをします。
  2. フライパンで牛肉を中心まで加熱し、中心75℃で1分間以上、または同等の加熱条件を確認します。
  3. アボカドを一口大に切ります。
  4. ライムの果汁と皮を加えます。
  5. マスタードなどの調味料を混ぜます。
  6. 牛肉とアボカドを和えます。
  7. 赤玉ねぎを盛り付けます。

業務用での活用ポイント

牛肉は2~3mm程度の薄切りにすると、サラダとなじみやすくなります。

ランチセット、デリ、オードブルに活用できます。

アボカドは時間がたつと変色しやすいため、製造から販売までの時間を考えて仕込み量を決めます。

牛ももと大根、にんじんの豆板醤煮込み

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牛もも肉を大根やにんじんと煮込む料理です。

豆板醤の辛味と黒酢の酸味を合わせます。

焼くだけでは硬さが気になる部分も、煮込みに活用できます。

材料・2人分

  • 牛もも肉・塊:150g
  • にんじん:4分の1本
  • 大根:6分の1本
  • きぬさや:4枚
  • にんにく:2片
  • 醤油:小さじ1

煮込み用調味料

  • 豆板醤:大さじ1と2分の1
  • 鶏がらスープ:500ml
  • 紹興酒または日本酒:大さじ1
  • 砂糖:小さじ1
  • 醤油:小さじ2分の1
  • 黒酢:大さじ2
  • 水溶き片栗粉:小さじ1

作り方

  1. 牛肉を20~30mm角に切ります。
  2. 醤油をまぶします。
  3. 大根とにんじんを下ゆでします。
  4. 鍋で牛肉の表面を焼きます。
  5. スープ、豆板醤、酒、にんにくを加えます。
  6. 30〜60分を試作の目安に煮込みます。量・設備・肉の大きさで変わるため、中心75℃で1分間以上、または同等の加熱を確認したうえで、筋のやわらかさに合わせて調整します。
  7. 黒酢と野菜を加えます。
  8. 水溶き片栗粉でとろみを付けます。

業務用での活用ポイント

硬さが出やすい部分や、形のそろわない部分を活用できます。

中華惣菜、弁当、ランチメニューに向いています。

肉の大きさをそろえることで、加熱時間を標準化しやすくなります。

牛もも肉の煮つけ

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醤油、砂糖、みりんを使った牛もも肉の煮物です。

大根やにんじんと合わせることで、和惣菜として展開できます。

材料・3~4人分

  • 下ゆでした牛もも肉:200g
  • 大根:適量
  • にんじん:適量
  • 長ねぎ:適量
  • にんにく:大さじ1
  • 砂糖:大さじ1
  • 醤油だれ:大さじ3
  • みりん:大さじ2
  • ごま油:大さじ1
  • 白ごま:少量
  • 黒こしょう:少量
  • 酒:大さじ1

作り方

  1. 牛もも肉を20〜30mm角に切り、下ゆで段階で中心75℃で1分間以上、または同等の加熱を確認します。
  2. 大根、にんじん、長ねぎを切ります。
  3. 鍋に肉、野菜、調味料を入れます。
  4. ふたをして煮込みます。下ゆで後に冷却保管した肉は、再加熱時も中心まで十分に熱し、肉と野菜の仕上がりを確認します。
  5. 焦げ付かないように混ぜます。
  6. 煮汁を全体に絡めて仕上げます。

業務用での活用ポイント

和惣菜、弁当、小鉢に活用できます。

作り置きは、急速冷却・低温保管・再加熱を管理できる設備と衛生管理手順がある場合に検討します。大鍋のまま室温で放冷しないでください。

ただし、製造後の冷却、保管、再加熱は、自社の衛生管理基準に従ってください。

牛もも肉は仕入価格より歩留りを確認する

牛もも肉の仕入れでは、1kg当たりの価格だけを比較しないことが重要です。

余分な脂肪や筋の整形で、使用できる重量は減ります。異臭・ぬめり・温度逸脱などが疑われる原料は、変色部分を削れば使用できるとは判断せず、衛生管理基準に従って使用可否を決めます。

この使用可能な割合が歩留りです。

歩留りの計算式

想定歩留り=使用可能重量÷仕入重量×100

実質原料原価は、次の式で計算できます。

整形後の使用可能部分原価=仕入kg単価÷整形歩留まり(80%なら0.80)

原価計算例

次の条件で計算します。

  • 仕入単価:税抜1,600円/kg
  • 仕入重量:10kg
  • 想定歩留り:80%
  • 1食使用量:整形後・加熱前の肉120g

使用可能重量は8kgです。

実質原料原価は次のとおりです。

1,600円÷0.8=税抜2,000円/使用可能kg

1食120gの肉原価は次のとおりです。

2,000円×0.12kg=税抜240円

同じ仕入単価でも、想定歩留り90%なら次の金額になります。

1,600円÷0.9=約1,778円/使用可能kg

1食120gでは、約213円です。

1食当たり約27円の差になります。

100食では約2,700円の差です。

これは説明用の仮定による試算で、当社の現行価格・実測歩留まり・実績原価ではありません。1食120gは整形後・加熱前の重量です。

実際の歩留りは、原料の状態、整形方法、用途によって異なります。

また、運賃、調味料、人件費、光熱費、包材費、消費税は含んでいません。

加熱後120gで提供するときの原価

整形歩留まりと加熱歩留まりは別です。整形歩留まり=整形後重量÷仕入重量、加熱歩留まり=加熱後重量÷整形後の加熱前重量で計算します。

仮に税抜1,600円/kg、整形歩留まり80%、加熱歩留まり75%とし、加熱後の肉120gを1食分にすると、加熱前160g(120÷0.75)、仕入原料200g(160÷0.80)が必要です。肉原価は税抜1,600×0.20=320円です。前の240円は加熱前120gの例であり、同じ盛付量ではありません。いずれも当社実績ではなく計算上の仮定です。

送料・調味料・副材料を足して1食の食材原価を出し、作業時間・光熱費・包材等も別に評価します。加熱前重量で原価を求めた後に同じ加熱ロスを二重控除しないでください。歩留まりの実測と計算方法は牛肉の1食原価で確認できます。

グリムキ済み原料で削減できる作業

グリムキとは、表面の脂肪や筋などを除去した整形状態を指します。

グリムキ済み原料には、次の利点があります。

  • 入荷後の整形作業を減らせる
  • 作業者による歩留りの差を抑えやすい
  • 廃棄物を減らしやすい
  • 製造計画を立てやすい
  • 原価計算を行いやすい

ただし、整形状態は販売者によって異なります。

「グリムキ」という名称だけで判断せず、写真や規格を確認してください。

ホルスタイン経産牛のもも肉を使う場合

ホルスタイン経産牛のもも肉は、赤身の色が濃く、肉の食感を感じやすい傾向があります。

ただし、個体差があります。

すべてのホルスタイン経産牛が、同じ肉質ではありません。

脂肪交雑、月齢、肉の締まり、熟成状態などによって変わります。

厚切りステーキのように使うよりも、次の用途から検討すると仕入れ判断をしやすくなります。

  • ローストビーフ
  • 薄切り
  • 焼きしゃぶ
  • 味付け加工
  • 煮込み
  • 惣菜原料
  • 加工原料

商品の特徴を理解し、メニューに合わせて規格を選ぶことが重要です。

牛もも肉の仕入れ前に確認したい5項目

牛もも肉を仕入れる前に、次の項目を確認してください。

1.部位

うちもも、しんたま、そとももなど、具体的な部位を確認します。

2.整形状態

脂肪、筋、かぶりなどが、どの程度除去されているか確認します。

3.想定歩留り

自社の用途で使用可能な割合を計算します。

4.1個重量とロット

設備、保管場所、製造量に合うか確認します。

5.最終用途

ロースト、スライス、煮込み、ミンチなど、使用目的を決めてから仕入れます。

商品を見てから用途を考えるのではなく、用途を決めてから商品を選ぶことが重要です。

牛もも肉に関するよくある質問

牛もも肉はステーキに向いていますか?

肉質によります。

もも肉全体を、厚切りステーキ向きと判断することはおすすめできません。

小割りした部位の肉質を確認し、厚さや加熱方法を調整してください。

牛もも肉が硬くなる原因は何ですか?

筋繊維の方向、厚さ、加熱時間、加熱温度などが関係します。

必要な中心加熱を確保したうえで、薄切りは乾燥を抑え、煮込み用は筋の状態に合わせて時間を調整します。

牛もも肉はユッケに使えますか?

一般の加熱用牛肉を、そのまま生食用に使用してはいけません。

生食用として提供する牛肉には、食品衛生法に基づく規格基準があります。

生食用食肉を扱う場合は、規格基準、加工設備、表示などを確認してください。

仕入単価が安い商品を選べば原価は下がりますか?

必ずしも下がりません。

整形で重量が減る場合や、作業時間が長い場合は、実質原価が上がります。

仕入単価、想定歩留り、人件費、廃棄量を合わせて判断してください。

まとめ|牛もも肉は用途設計によって利益につながる

牛もも肉は、ローストビーフだけの原料ではありません。

部位と肉質に合わせれば、次のメニューに展開できます。

  • エスカベッシュ
  • サラダ
  • 煮込み
  • 甘辛煮
  • 焼きしゃぶ
  • 弁当
  • 和洋中の惣菜
  • 加工食品

重要なのは、価格だけで仕入れないことです。

部位、整形状態、想定歩留り、仕込み時間まで確認してください。

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牛肉を部位名だけで選ぶのではなく、最終商品と利益から逆算して選ぶことが、仕入れ改善の第一歩です。

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この記事を書いた人

食肉販売技術管理士。 食肉のプロを養成する学校で「技能賞」を受賞後卒業。関東、関西中心に全国各地で食肉の技術と知識を学ぶ。 国産牛卸の(株)五十嵐商会にて、品質管理室室長を務め、牛の捌きを10年で5万頭の経験。現在は五十嵐商会(株)代表取締役。

近年では、NHK「あさイチ」に出演。「関西じゃらん」の特別付録にて牛肉の寄稿・監修も。

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