熟成肉とは最近よく耳にする言葉になります。
「ドライエージング」なんてのもよく耳にします。
美味しくなるのかどうかというと千差万別なところではありますが、科学的観点からみると肉質が変化し、良い傾向がみられるとあります。
ただし、温度帯や期間などの取り扱いを間違えてしまうと、おなかが痛くなることがありますので注意しておきたいところです。
今回は、松坂牛などの和牛において「熟成」するとどうなるのか?紹介していきたいと思います。
多種多様な銘柄牛はありますが、熟成肉とは何か?を迫ります!
近年においてよく熟成肉についてよく語られることがあります。飲食店での看板やメディアでも騒がれる熟成肉とは何なのか。
また、現時点での熟成肉について定義付けされていませんが、科学的根拠にもとづいて熟成肉とは本当にうまくなるのか迫って見たいと思います。
死後硬直
動物をと殺してからある時間が経過すると、筋肉は一時的に硬くなります。
この現象を死後硬直といい、と殺によって酸素の供給が絶たれるために起きる筋肉特有の生化学的反応の反映として、筋原繊維たんぱく質が構造変化をおこします。
生体内の筋肉の収縮と弛緩
家畜の筋肉は生きている時は好気条件におかれ、運動のために収縮などを繰り返していますが、生きている状態で筋肉が刺激を受けると筋小胞体からカルシウムイオンが放出され濃度が上昇します。
カルシウムイオンがトロポニンを結合すると、細いフィラメント上のトロポニン-トロポミオシン複合体の位置にずれが生じ、アクチンは太いフィラメントから突出しているミオシンの頭部との相互作用が可能になり筋肉は収縮します。
これに必要なエネルギーは、ミオシンのATP分解酵素作用によりATPが分解されることにより供給されます。
刺激が消えるとカルシウムイオンは筋小胞体に取り込まれ、ミオシンとアクチンの相互作用が、トロポニン-トロポミオシン複合体によって妨げられ、筋肉は弛緩します。
筋肉の収縮、弛緩に必要なATPは、グリコーゲンの好気的解糖作用及びクレアチンリン酸から供給されています。
と殺ごの筋肉の変化
死後硬直の筋肉では、カルシウムイオンが筋小胞体に取り込まれているので弛緩状態にあります。
死後時間の経過とともに、グリコーゲンからグルコースを経て生成される乳酸の蓄積によって筋肉のPHが中性から酸性付近まで低下します。
一方、筋小胞体はカルシウムイオンを内部に取り込んでおく機能を失うためカルシウムイオンが筋線維内に漏出するようになり、生きている筋肉と同等の収縮がおきます。
ATPが完全に消失して死後硬直が最高となった時の筋原線維では、すべてのミオシンとアクチンとが強く結合した硬直複合体を形成しています。
死後硬直時の筋肉は硬く、保水性が悪いため、加熱による目減りが大きく、組織も硬いので食肉としては不適当な状態です。
死後硬直の解除と肉の熟成
と殺後の肉は柔らかいが旨味に乏しく、死後硬直中の肉は硬く調理加工に適しにくいです。
これに対して、硬直した肉を冷蔵して数日間置くと、死後硬直が解除され肉は遅緩して再び柔らかさを取り戻して、保水性も回復して肉特有の風味がでてきます。
このように、食肉をと殺後、ある期間冷蔵し、死後硬直が解除するとともに食味が増加することを「肉の熟成」とよびます。
この死後硬直が解除は、生きている筋肉の遅緩とはまったく異なる機構でおきる現象で、筋原線維中のたんぱく質の分解により、4つの原因が考えれています。
- アクチンとミオシンの相互作用の変化
- 筋原線維中のZ線の脆弱化
- 高分子たんぱく質コネクチンの分解
- 結合組織コラーゲンの分解
死後硬直の過程で筋原線維が収縮する時に変化が起こり、筋節は短くなります。
硬直が完了した段階ではATPが存在しないので、アクチンとミオシンは強く結合して硬直複合体(アクトミオシン)を形成しています。
枝肉の状態で熟成すると熟成期間に筋節が当初の長さに復元します。
食肉の硬さは筋節の長さとも関係し、筋節が短く、2種類のフィラメントの重なり合いが大きほど硬いので食肉の軟化の要因になっていることを示します。
筋節の長さの復元は、アクトミオシンのアクチンとミオシンの強い結合が脆弱化するためだと考えられています。
一方、死後貯蔵中の筋肉から調製した筋原線維は、と殺直後の筋肉から調製したものに比べて、長さも短く筋節の数も少なくなっています。
これを筋原線維の小片化とよび、これはZ線の脆弱化によるものであることが明らかにされています。Z線が熟成中に完全に消滅することは通常起こりませんが、わずかな弱まりであっても筋肉の張力の発生を低下させ、アクチンとミオシンの結合の脆弱化とは別に、食肉の軟化に繋がるものと考えれています。
死後、筋小胞体のカルシウムイオン保持能力が失われるにつれて、筋原線維中のカルシウムイオンの濃度が高くなり、カルシウムイオンによって活性化されるたんぱく質分解酵素がZ線に特異的に作用し、Z線の脆弱化をもたらします。そのために筋原線維は小片化しやすくなります。
このことが肉の硬さの著しい低下に結びつき、熟成完了までの期間は、牛の場合は2℃の貯蔵で10日~14日間、豚の場合は4~6日間、鶏の場合は1日程度です。
肉の熟成に伴う、旨味成分の蓄積と生成
一般的に肉を熟成させると、肉の美味しさが向上すると考えられていますが、これは肉中のATP分解と、タンパク質の分解によって生成されるアミノ酸によって、旨味が増すと考えられています。
ATPは家畜のと殺後、ATPの分解によりイノシン、イノシン及びヒポキサンチンに変換します。
ATP分解物であるADP、AMPは貯蔵期間が長くなっても低いレベルのままでほとんど増加せず、IMPやイノシンが増加します。
このIMPが肉中の旨味を呈し、肉中のアミノ酸との相乗効果により、熟成肉の旨味向上に寄与しています。肉の熟成期間中にタンパク質は、徐々に分解して遊離アミノ酸が増加します。
また、筋肉中のアミノ酸は熟成期間中に増加することから、肉の風味の向上に寄与していると考えられています。
以上のことから熟成によって行われる牛肉はうまくなるのではと思われます。
とは言っても、味については人それぞれですから千差万別といえるではないかと思います。
まとめ
科学的観点からも熟成すると牛肉などは、うまくなることがわかりますが重要なものは温度と期間ではないでしょうか。
どの温度帯で保管するか、どれくらいの期間で保管するかなど温度やながければいいものではなく逆に腐るという状態になりますので、注意したいところです。
よって旨味のある牛肉は、ラベル表示はされていませんが、と殺後どれくらいの期間がたったのかという所も大切な所です。