近年では、人気の熟成肉。
熟成肉専門の焼肉店やステーキのお店がみられるようになりました。
エムマートでも「熟成済み」や「熟成肉」と商品も増えるようになりました。
今回は、このエムマート市場における「熟成」についてご紹介していきます。
肉の熟成には旨みを引き出す効果がある
エムマート(業務用食材卸市場)や近年から多く見受けられますが、「熟成肉がうまい!!」とあります。
製造方法については、昔からあるものです。江戸時代以前から食用として牛肉は、食べられなかった時代に「薬用」として肉を食していましたが、このときにおいては味噌漬けなどの様々な加工方法が生み出されていました。
どうしたらおいしく食べられるのか?当時の人々は、智慧をしぼりながら商品開発をしてきた結果、時の権力者たちは、それを食しこよなく愛していたことは歴史の史実があります。
今回は、エムマート市場でも多く見受けられるようになった、その「熟成」について掘り下げて解説していきたいと思います。ただし、「熟成」についての良し悪しは様々ありますので、参考程度にしていただければと思います。
牛肉の熟成とは
活きた魚を刺身で召し上がったことがありますか?こりこりとした歯ごたえと、独自の甘味を持った素晴らしい味覚に出会った方は、何故こんなにおいしいのかと思われたことでしょう。
魚類や動物類は、死後に必ず硬直現象を起こします。筋肉の中には糖類に属するグリコーゲンがあり、これが乳酸化する前に食べるわけですから、独自の甘いうまみが味わえる、というわけです。
鮮度の悪くなった魚類は、身のしまりが悪くなり、急速に風味を失います。魚を料理するには、鮮度の良いものを手早く調理することです。
台湾など東南アジアの一部では、夜中に屠畜した豚を朝早く露店の市場で枝肉のまま吊るし切りにして売っています。現地の人の話では、屠畜後、冷蔵庫に入れて2~3日経ったものはうまみが乏しくなるので評価は下がるといいます。
すなわち、屠畜後数時間しか経過していないものが評価が高いのです。
屠畜直後というと、まだ死後硬直の状態にあり、筋肉は硬いはずです。これを手早く調理して食べるということは、きめ細かい柔らかな部位でもかなり硬いと思われます。
しかし、先ほどの釣りたての魚の味と同様に、甘味を感ずると思われます。硬い肉は、「不味い肉」という先入観のある日本人には、到底理解できないかもしれません。
動物類は、屠畜後に必ず死後硬直が起こります。これは、死後、酸素を供給する血液の循環が停止するわけですから、酸化現象が停止します。そして、筋肉に含まれるグリコーゲンが分解して乳酸が生成され、PHが低下し、ATPの減少になどによって保水性が減じ筋肉が硬直します。
屠畜直後の硬直状態のままでも食べることはできますが、肉は「熟成」という過程を経ることで軟らかくなり、より一層独自の風味がでてきます。
動物の体内細胞に含まれる何種類かの酵素は、乳酸やリン酸を生成し、これらは微生物の発生を抑えつつ、死後も一定時間働き続けます。
また、死滅した細胞(主としてタンパク質の組成)やコラーゲンを膨潤させ、肉をやわらかくし同時に保水性を生じさせます。この一連の現象を「自家消化」と言います。
冷蔵庫での牛肉、豚肉の保管の理想的な維持温度は、摂氏0℃~2℃くらいです。熟成機関としては、牛肉では5日以上10日くらいです。
熟成期間としては、牛肉では5日以上10日位、豚肉では3日以上5日位が妥当です。保管中にもし冷凍状態になりますと、熟成作用は停止するか緩慢な状態になります。また、庫内が5℃以上になりますと、熟成は早く進みますが、同時に食肉そのものの変質が起こります。
また、熟成には個体差にもかなり留意しなければなりません。すなわち、若齢で水分の多い食肉は熟成期間が短く、脂肪のよく付いた肥育の進んだものは長めとなります。
最近ではあまり見かけませんが、肉付きの良い種雄牛を食肉用にする場合、3週間以上冷蔵庫内に保管し、わざと麹菌などを寄生させ、肉の表面が真っ白く綿毛が生えたような状態にします。
そこでこの1~2cm程度の生えたかびをふき取り、表面が黒くなったところをトリミングして販売していたことがありました。
昭和30年代のことです。この状態にまでしますと熟成がかなり進み、硬い種雄牛の筋肉も相当に柔らかくなり、また麹菌の作用もあって風味は味噌漬けのような一種の独特のものができます。
東京の下町のある牛肉店の老舗は、今でも高級な和牛をこの状態まで熟成させ、販売して絶大な人気を得ています。
また、ある高級フランス料理店では、サーロインやヒレなどの高級部位をこのような熟成状態にしてから調理していたりもします。
しかし、問題点としては、商品回転率の悪さやトリミングをかなりきつくしなくてはなりませんので、商品コストが上がり採算上の問題がでます。
また、一種の独特の風味にすべての人が馴染むとは限りません。
しかし、このような牛肉を味わいますと、軟らかい上に麹菌が作り出す味噌漬けに似た風味が、なんともうまいという人も少なくありません。
この長期熟成の条件は、完全な冷蔵庫内の温度維持と、なんといっても牛肉の個体条件があります。すなわち、肥育の進んだ水分の少ない牛肉でなければなりません。
最近、牛肉は国内生産の伸び悩みと需要の漸進的な拡大と共に、牛肉生産輸出国からの大量の輸入が恒常的になっています。
需要家は、安値である輸入牛肉に質的向上を期待する声が強く、主要輸出国であるオーストラリア、ニュージーランドでは、その声に応えるべく色々と技術改善を試みています。
例えば、生体の段階から牛の屠畜年齢や重量などを、需要家の要求する厳しい規格に基づいて生産し、日本に向けて輸出しています。
輸送及び保管の段階でも、昔からの冷凍状態のものから真空包装によるチルドパックが一般的となり、高い品質を保持する努力を続けています。
輸出国を出た食肉が日本の小売店で販売されるまでには、おおよそ3~5週間くらいかかっています。この間、牛肉に不可欠な「熟成(エージング)」が自然に行われています。従って、輸入牛肉が硬くて不味いというのはもう過去の話です。
しかし、熟成も過度になりますと変質や品物の痛みが起こります適当な期間(真空包装状態のものでは5週間位までのものが適当と言われています)に熟成を結着させるため、急速凍結をしてフローズンで保管する方法も開発されました。
この商品はエージドビーフと呼び、牛肉が輸入自由化される以前の平成3年頃は、かつて畜産振興事業団が需給調整用にしてい利用していました。
しかし、現在は、牛肉は輸入自由化されており、輸入相手国からの商品購入は、需給家の要求によってチルドあるいはフローズンと、その形態ははっきり区分されています。
チルドでの真空包装製品も各種の技術革新で、風味を損なわない期間(シェルフライフ)が更に延伸し、60~100日位のものまで可能になりつつあります。
まとめ
今回は、熟成についてでしたが、麹菌のを使った手法は今でも行っているところはありますが、ブランド牛にも適用しているところもあります。また、機械等の技術が革新し、手軽に熟成肉を作れるようにもなってきています。また、硬いというイメージが強いホルスタインにおいても冷凍ものでは難しいですが、冷蔵(チルド)で約5日程度を保管しますと味わいが深まります。
ただ大切なことは、熟成と変質の違いを見定められないような状態で行うと、大変なことになりますので注意が必要です。
この熟成の手法などは、まだまだ多くの知識と経験が必要になってきます。
是非参考までに。
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